これまでの結果で、RA患者滑膜由来の滑膜線維芽細胞とマウス破骨細胞前駆細胞を共存培養し7日後にTRAP陽性の多核細胞の有無を観察したところキメラ共存培養ではそもそもマウス由来細胞の生存が維持されなかった。実際、滑膜線維芽細胞培養上清に含まれるM-CSFの濃度は極めて低値であった。マウス破骨細胞前駆細胞の代わりにRaw 264.7細胞を用いたところ、この細胞はM-CSF非依存性のため生存可能であったが、破骨細胞様細胞は分化しなかった。更にキメラ培養系にM-CSF/RANKLを添加して初めてTRAP陽性多核細胞が分化した。また滑膜線維芽細胞培養上清に含まれるOPG(RANKLシグナルを阻害する囮受容体)の濃度はマウス骨芽細胞に比べて著明に高値であった。このことから、骨芽細胞と異なり滑膜細胞はM-CSFの産生能が低く、またRANKL産生能に比べてOPG産生能が高いため破骨細胞の誘導能が低いことが考えられた。 実際、骨芽細胞培養上清からはRANKLが検出されたが滑膜細胞培養上清からは検出されなかった。これは予想通りであったが、意外なことに 前者にも後者と同様に高濃度のOPGが検出された。このことから骨芽細胞の産生する可溶性RANKLの多くはOPGにより中和されていることが示唆される。それにも関わらず骨芽細胞の共存培養型で破骨細胞が観察される理由として、骨芽細胞の発現する膜型のRANKLが重要な役割を果たすという仮説を立てている。即ち、骨芽細胞の産生するOPGは、骨芽細胞から離れた場所で破骨細胞が分化しないように制御するメカニズムではないかと考えている。
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