研究課題/領域番号 |
15K10489
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内山 勝文 北里大学, 医学部, 准教授 (90286310)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 人工関節周囲感染 / PCRラテラルフロー法 / 迅速細菌遺伝子検査 / 16S-rRNA / シーケンス解析 / αディフェンシン |
研究実績の概要 |
PCRラテラルフロー法(PCR-LF法)を用いて黄色ブドウ球菌:MSSA、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌:MR-CNS、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:MRSAの検出の試みを継続して行った。昨年と同様に臨床データや臨床経過、関節液検査(細胞数、糖、CRP値など)、病理組織像から感染陽性例、陰性例と診断した検体の、細菌培養検査結果と比較し、PCR-LF法の感度、特異度を検討した。結果としてPCR-LF法は、細菌培養検査より感度がより優れていることを報告した。 また3菌種以外の菌も同定するために真核細胞由来のeukaryote-made thermostable DNA polymerase(e-Taq)を用いた16SリボゾームRNA陽性例に対して、シーケンス解析による起炎菌の推定を試みた。本酵素使用により術中材料より直接、10の2乗 CFU/mlまで細菌DNAの検出が可能となったが、臨床での感染診断との整合性につき引き続き検討が必要であると考えている。 今まではMRSA、MSSA、MR-CNSに限定した検査であったが、グラム陽性菌16種、陰性菌9種の存在が判定可能な検査法(PCRG±)が完成したので臨床的有用性につき検討した。PCRG±は感度が高く感染の診断に有用であったが、死菌が陽性になる可能性もあった。また対象菌種が限られていることから、各種検査結果からの総合的診断が必要であると考えられた。 近年、人工関節周囲感染の診断にはMusculoskeletal Infection Societyの診断基準(2013年)が使用されることが多いため、本基準に対する感度・特異度についても検討した。特に診断基準に含まれる関節液エステラーゼ試験や、その他にも関節液CRPなども計測し感染の診断精度につき検討した。また、αディフェンシンを使用した感染の診断精度の検討にも着手している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラム陽性菌16種、陰性菌9種の存在が判定可能な検査法(PCRG±)が完成したが、更なる臨床検体での評価が必要である。PCR-LF法とe-Taq酵素を用いたシーケンス解析も継続して行っていく必要がある。 Propidium monoazige (PMA)を用いた死菌・生菌の分別判定を行い、希釈感度試験で菌量が10の4乗 CFU/ml以上、混合試験より死菌と生菌が10の2乗 CFU/ml以上の菌量の差がないと分別することが出来なかったため、臨床応用可能な方法の導入が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
グラム陽性菌16種、陰性菌9種の存在が判定可能な検査法(PCRG±)が完成したが、更なる臨床検体での継続的な評価が必要である。PCR-LF法とe-Taq酵素を用いたシーケンス解析を継続して行っているが、短時間での菌種の同定は容易ではないため、新たな菌種同定方法の導入を検討している。また死菌・生菌の分別判定を行うことができる、臨床応用可能な方法の導入が必須である。 更なる迅速化・簡便化には核酸増幅時間の短縮が可能なHyper PCR装置の導入が必要であり、e-Taq酵素を使用したTm mapping法を導入する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究費使用状況はおおむね予定した申請額が使用されていた。残金は昨年度の繰り越し残高38,806円があったことや、次年度の支給額を考慮し無理には使用せず224,579円を次年度に繰り越しした。
|
次年度使用額の使用計画 |
新たにαディフェンシンを使用した感染の診断制度の検討にも着手し、死菌・生菌の分別が臨床応用可能な方法の導入による経費が必要である。e-Taq酵素の使用したTm mapping法を導入する予定から、支出の増加が予想される。頻繁な学会報告や論文の作成も開始することが考えられ、論文の校正費や投稿料の計上も必要である。
|