研究課題
人工関節周囲感染の術中迅速細菌遺伝子検査の運用を目的に、PCRラテラルフロー法(PCR-LF法)を用いてfemA、mecA の組み合わせから、ブドウ球菌系3菌種(MSSA、MR-CNS、MRSA)の検出を試みた。同時に臨床データや治療経過、関節液検査(細胞数、糖、CRP値など)、病理組織像から診断した、感染陽性例の細菌培養検査結果と比較した。その結果、PCR-LF法のMSSA、MR-CNS、MRSAの感度の高い検出が可能となったが、特異度は細菌培養検査のほうが優れていた。また、femA、mecAの両者が陰性の場合、その他の菌が存在していても (偽)陰性になってしまうという欠点があった。そこで16S-rRNA遺伝子を増幅することで細菌の存在を確認し、さらにシーケンス解析による塩基配列情報から細菌の種類を類推し、細菌培養結果とシーケンス解析の結果を比較したところ、菌種の検索が十分可能になった。しかし16S-rRNA遺伝子の検出には大腸菌由来の酵素を使用しており、PCRのサイクル数を増やすと大腸菌の遺伝子が検出されてしまう。そこで真核細胞由来のeukaryote-made thermostable DNA polymeraseの提供を受けPCRのサイクル数を上昇させ、シーケンス解析での再評価を行ってきた。またPCR-LF法を用いて、グラム陽性菌16種類、グラム陰性菌9種類の細菌16S-rRNA遺伝子のuniversal プライマーを用いたPCR法と耐性菌で検出頻度が高いMRSA、ESBLの同時スクリーニングに対応するオリジナルの特異的プローブを用いたPCR-LF法を完成させ臨床診断との整合性を検討した。頻度の多い検出菌は十分診断可能であるが、同定できる菌種の数に限界があるため、検出頻度の少ない菌の診断は困難であった。
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