研究課題
閉経後骨粗鬆症は、閉経によるエストロゲン欠乏により破骨細胞活性が骨芽細胞の活性を相対的に上回るために、骨量が減少することで発症することが知られている。しかし、エストロゲンが欠乏するとなぜ破骨細胞が活性化するのか、その機構については明らかにされていなかった。申請者らは、エストロゲンが恒常的に破骨細胞のhypoxia inducible factor 1 alpha (HIF1α)を抑制していること、閉経によるエストロゲン欠乏によりHIF1αが抑制されず、破骨細胞の活性化から、骨量減少につがなることを報告した。また、ビタミンDアナログの1つであるED71には破骨細胞のHIF1αの抑制効果があること、このことにより閉経後骨粗鬆症において破骨細胞の活性抑制から骨量減少をブロックする効果があることを示した。また、男性骨粗鬆症においても女性の閉経によるエストロゲン欠乏時と同様に、アンドロゲンが破骨細胞のHIF1αを恒常的に抑制していること、精巣機能低下によるアンドロゲン欠乏によって破骨細胞にHIF1αが蓄積し、破骨細胞の活性化から骨量減少に至ること、HIF1α阻害薬の投与によって男性骨粗鬆症のマウスモデルにおいては骨量減少が完全にブロックできることを見出し報告した(Biochem Biophys Res Commun. 2016)。
2: おおむね順調に進展している
破骨細胞のHIF1αが女性の閉経後骨粗鬆症のみならず、男性の性ホルモン欠乏性骨粗鬆症の治療標的であることを世界に先駆けて報告した。閉経後骨粗鬆症の発症機構の解明からHIF1αが治療標的であることに到達し、閉経後骨粗鬆症患者において骨吸収抑制作用を発揮するビタミンDアナログにHIF1αの抑制効果があることを見出した点、さらに破骨細胞のHIF1αが男性骨粗鬆症においても治療標的となり得ることを実験的に証明した点などにおいて、概ね研究が順調に進展していると考えている。
男女共性腺機能低下性の骨粗鬆症の治療標的としてHIF1αを同定したことは、in vitroの破骨細胞の培養系において様々な薬剤の骨粗鬆症治療薬としての可能性を検証することを可能とすることを意味している。そこで、今後はin vitroにおける破骨細胞のHIF1αの抑制効果をリードアウトに、骨粗鬆症治療薬として可能性のある薬剤を選択し、in vivoにおいてその骨量減少抑制についての効果を検証したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件)
J Bone Miner Metab
巻: in press ページ: in press
Biochem Biophys Res Commun
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