研究課題/領域番号 |
15K10492
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
二木 康夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10276298)
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研究分担者 |
福原 悠介 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60594645)
宇田川 和彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70528364)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / 三次元軟骨モデル / IL-1 / TLR |
研究実績の概要 |
1)ATDC5と三次元培養軟骨モデルの構築:ATDC5細胞を早期に軟骨分化させるため、ITSおよびBMP2を含む培地でAlginate beads培養を行った。その後Alginate beadsを溶解させ細胞を回収し、コラーゲンスキャフォールド(アテロコラーゲンスポンジ MIGHTY, KOKEN)に細胞を播種し、三次元軟骨モデルを作成した。 2)三次元培養軟骨モデルとメカニカルストレスの影響:組織学的検討とともに、三次元培養組織を力学負荷下で培養するため、力学負荷培養装置(CLS、テクノビュー)を用いて、繰返し力学負荷(40kPa、0.5Hzで3時間)を加えた。力学負荷終了後6時間で、負荷群と非負荷群の培養上清中のPGE2濃度を測定し、組織のCol-Ⅱの発現をreal time PCRにて評価した。軟骨分化因子であるBMP2の添加によりCol-Ⅱの発現は増加した。組織学的にはコラーゲンスキャフォールド内の細胞は周囲に基質を有し、軟骨細胞様の形態を呈していた。力学負荷による細胞変化として、ヘテロクロマチンの増加が見られた。またメカニカルストレスにより、培養上清中のPGE2とADAMTS4の発現は有意に増加した。三次元での軟骨細胞実験には大量の細胞が必要であり、また周囲の基質が重要視される。今回使用した方法は、細胞にはATDC5を周囲基質にはコラーゲンスキャフォールドを用いることで再現性の高い研究が可能となった。細胞形態、力学負荷による反応から生体軟骨の組織変性を反映する実験モデルとして有用であると考えられた。 3)メカニカルストレスとIL-1レセプターシグナルの関連:上記のモデルを使用し、メカニカルストレスをかけることで、IL-1レセプター発現の上昇を認めた。メカニカルストレスとIL-1Rを介したシグナル伝達よる複合的な作用が関与している可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三次元培養軟骨モデルの作成においては、一定の目標を達成することができたと考えている。IL-1シグナルに着目したメカニカルストレスとの関連について実験を重ねており、さらに検討を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)KOマウスを用いたOAモデルの作成 OAモデルとしてマウスのDMMモデルを使用する。8週齢雄のIL-1αβ KO、IL-1R KO、MyD88 KOマウスにDMMモデルを作製し、術後8週時に病理組織学的検討を行い、OAの程度をスコアリングし比較する。 2)メカニカルストレスのケミカルシグナルへの変換点の検討 今回作成した三次元軟骨モデルにメカニカルストレスを加え、IL-1R、TLR4の下流で働く分子であるIRAK4、TRF、TRIF、MyD88などを、siRNAの手法でそれらの分子の発現を減弱させた場合、MMP-3、ADAM-TS4の発現がどう変化するかをチェックし、dominantなシグナルを絞り込む。またMAPKs(p38、JNK、ERK)に関して、特異的インヒビターを加えた後MMP-3、ADAMTS4の発現を測定し、どのMAPKsを使用しているかを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
三次元培養軟骨モデルの確立とメカニカルストレスの影響についての検討においては、試薬購入やスキャフォールドの使用で予定よりも支出を抑えることができた。今後のKOマウスの購入や、siRNAを含めた試薬購入に使用できると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
OA(DMM)モデルを作成のためのIL-1αβ KO、IL-1R KO、MyD88 KOマウスの購入とマウスの繁殖、維持。軟骨細胞の三次元培養ならびにIL-1シグナルの解析のためPCR用のプライマー、試薬購入、タンパクレベルの分析のためウェスタンブロットまたはELISAのための抗体の購入または作製、研究結果を海外学会で発表するための渡航費等を予定している。
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