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2016 年度 実施状況報告書

神経系による生理的骨代謝調整系の解明および喫煙(ニコチン)が骨代謝に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 15K10493
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

佐藤 和毅  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60235322)

研究分担者 宮本 健史  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (70383768)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードニコチン / α7nAchR / 骨代謝
研究実績の概要

喫煙者は骨折リスクや術後の偽関節率が高くなることが知られている。加齢に伴う骨の脆弱化、骨折治癒遷延は喫煙によりさらに悪化するため、喫煙による骨への影響における作用機序の解明は重要な事項である。しかし、ニコチンが生体に及ぼす影響に関する臨床報告は数多くあるものの、基礎研究分野での報告は乏しいのが現状である。また、ニコチンの骨・軟骨に対する影響の主因はニコチンの血管収縮作用による局所的な循環障害であるとされてきた。しかし、我々は、これまで行ってきた研究結果よりニコチンが骨組織を形成している骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞に対して直接かつ特異的に作用することで骨代謝に影響を及ぼしていると考え、研究を進めた。本研究では、ニコチンが骨に及ぼす影響の作用機序を明らかにし、体系的に解明することを目的とした。
研究方法は、まず骨形成に対するニコチンの影響をマウス大腿骨骨折モデル、異所性骨化モデルを作成しsoft x-rayにて評価し検討した。次に、骨質に対するニコチンの影響を検討するため、マウス大腿骨をニコチン添加しorgan cultureを行い、骨質劣化マーカーとされるAGEsの一つであるpentosidine量を計測した。次に、α7nAchRノックアウト(α7KO)マウスの骨形態計測(骨密度測定(DEXA法)、骨形成速度測定(calcein double labelling法)、Toluidin Blue染色、TRAP陽性細胞(破骨細胞)数の測定)を行った。
その結果、ニコチンの作用によりマウス骨組織にAGEsの蓄積が有意にみられたことからニコチンが骨質を低下させるという新たな知見が得られた。骨密度の検討からα7nAchRが骨代謝に大きく関わることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

H28年度は、マウス大腿骨骨髄由来の破骨細胞培養を行い、ニコチン、アセチルコリンに対する破骨細胞の反応性を細胞数、Realtime PCRにより破骨細胞活性の指標となる転写因子であるCtsk、Nfatc1の発現を検討した。また、破骨細胞を制御しているOPGをWTマウスとα7KOマウスで検討するためELISA法によりそれぞれの血清OPGを測定した。さらにOPGの値の変化が、ニコチン投与、迷走神経切断、WTマウスとα7KOマウス間での骨髄移植によりどのように生じるかを検討した。
結果、骨質に対するニコチンの影響の検討では、pentosidine量はニコチンを添加することで有意に増加した。α7KOマウスの検討では、WTマウスに比べ骨密度は、有意に高く、組織上の破骨細胞数は有意に少なかった。血清OPG濃度の検討では、α7KOマウスはWTマウスに比べ有意に高かった。迷走神経切断では有意に上昇し、ニコチンのマウスへの経口投与により有意に低下した。α7KOマウスとWTマウス間で骨髄移植を行うと血清OPG濃度は、ドナーがα7KOであった場合に高値を示した。
ノックアウトマウスの表現型から予測される野生型マウスでの生理的なレセプターを介した破骨細胞の調節系は、α7レセプターを介したシグナルが迷走神経系を介し、アセチルコリンを放出され、血球系などを介さず骨でのα7レセプターが関与し、最終的には、OPGがDownregulationされることで破骨細胞活性を抑制すると考えた。血球系が関与しないことを示すため、野生型、ノックアウトマウス型両者で入れ替える骨髄移植実験を行った結果、ノックアウトマウス由来の骨髄が移植された群で血漿OPGが高かった。したがって、神経系は、血球系を介して、骨にシグナルが伝達されるメカニズムがあると予測した。また、血球系が直接OPGをコントロールしていないことも分かった。

今後の研究の推進方策

現在、ノックアウトマウスの骨髄、詳しくはマクロファージ系の細胞であるMac1陽性細胞では、TNFαが高値を示すことをFACSで確認している。血球系の中でもマクロファージが神経系からの刺激を受け、TNFαを介してOPGをコントロールしている可能性を強く疑っている。
マクロファージから産生されたTNFαは、骨内の骨芽細胞のOPG産生を制御している可能性を考え、骨芽細胞様細胞であるMC3T3cellにTNFαを加え培養する実験系を進めている。さらに、マクロファージから産生されるTNFαが破骨細胞調節系にCriticalであることを示すための実験も進めている。

次年度使用額が生じた理由

ほぼ計画通りに研究を推進しているが、平成28年度後半から29年度初頭に予定している実験系(ノックアウトマウスのMac1陽性細胞を使用する系など)で多くの予算を必要とすると考えられるため、若干の余力を次年度に残した。

次年度使用額の使用計画

上記の実験系(ノックアウトマウスのMac1陽性細胞を使用する系)など、細胞培養、添加実験に予算を必要とします。

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公開日: 2018-01-16  

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