研究課題
平成28年度は、研究実施計画に従い、メカニカルストレスを感知する骨細胞シグナルの解析を行った。マウスの大腿骨を採取し、横断面を組織学的に観察した。マウスの大腿骨は生理的に彎曲しているので、凹面側(compression site)と凸面側(tensile site)に分けて評価した。カルセインで2重標識し、骨形成速度(bone formation rate/bone surface)を計算した。凹面側では、骨膜性骨形成が亢進し、免疫染色で骨細胞のPTH/PTHrP受容体(PTHR1)のタンパク発現が亢進していた。一方、凸面側では、凹面側のような骨膜性骨形成の亢進はみられず、むしろ皮質骨内面での骨形成が亢進し、免疫染色で骨細胞のPTHR1のタンパク発現は凹面側より少なかった。Compression siteにおける骨細胞のPTHR1発現亢進と骨膜性骨形成亢進の関連性が示唆された。1メートルの高さの金網製飼育ケージ内で7日間飼育したマウス(クライミング運動により荷重負荷したマウス)の脛骨近位部では、皮質骨内に存在する骨細胞においてPTHR1のタンパク発現が亢進し、皮質骨内面の髄腔内でオステオカルシン陽性の骨芽細胞が増殖していた。大腿骨および脛骨の皮質骨からmRNAを採取し、RT-PCRで解析した結果、スクレロスチンのmRNA発現はコントロール群と差がなく、RANKLは有意に低下していた。PTHR1は有意に亢進していた。荷重負荷により皮質骨内の骨細胞において、PTHR1はmRNAおよびタンパクレベルでともに発現が亢進していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究2年目である平成28年度は、当初の研究計画であった「メカニカルストレスを感知する骨細胞シグナルの解析」をおおむね順調に行うことができた。長管骨骨幹部のcompression siteの皮質骨内骨細胞および荷重負荷した長管骨の皮質骨内骨細胞において、副甲状腺ホルモン受容体の発現がmRNAおよびタンパクレベルでともに亢進していることを明らかにした。平成29年度も当初の研究計画に従い「荷重増減モデルマウスにおける破骨細胞の遊走能と活性化」について解析を進めていく予定である。
平成29年度は当初の研究計画に従い「荷重増減モデルマウスにおける破骨細胞の遊走能と活性化」について解析を推進していく予定である。RANKLによる成熟破骨細胞への分化誘導、あるいはS1Pによる成熟破骨細胞への分化制御に対する反応性の変化を明らかにする。活性型破骨細胞と不活性型破骨細胞についても解析する予定である。今後さらに破骨細胞の分化や活性に影響を及ぼす薬剤を用いた解析を推進させていく方針である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
Stem Cells International
巻: 2017 ページ: 9312329
10.1155/2017/9312329
PLoS One
巻: 11 ページ: e0153231
10.1371/journal.pone.0153231. eCollection 2016
整形・災害外科
巻: 59 ページ: 1395-1402
Journal of UOEH
巻: 38 ページ: 207-214
10.7888/juoeh.38.207
Journal of Bone and Mineral Metabolism
巻: 34 ページ: 193-200
10.1007/s00774-015-0655-5