研究課題/領域番号 |
15K10499
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 教授 (90248576)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 副甲状腺ホルモン受容体 / 非荷重 / 骨細胞 / 皮質骨 / 骨粗鬆症 / アセトアルデヒド脱水素酵素 / メカニカルストレス / マウス |
研究実績の概要 |
メカニカルストレス下における骨構成細胞間コミュニケーションの分子調節機構を解明することを目的に研究を行っている。平成30年度は、荷重増減モデルマウスの骨組織および骨髄細胞を用いて、副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)を介するシグナルが骨形成と骨吸収を制御する分子調節機構について解析を行った。Aldehyde dehydrogenase 2(Aldh2)は、アルコールの代謝で生じるアセトアルデヒドを酸化する酵素であるが、近年は骨粗鬆症との関連が指摘されている。我々は、Aldh2遺伝子欠損(Aldh2KO)マウスは、野生型マウスと比べ骨形成能が高く、骨組織においてPTHRの発現が高いことを明らかにしてきた。今回、8週齢の雄性Aldh2KOと野生型マウスに対して、1週間の尾部懸垂による非荷重群と通常飼育による荷重群の4群間で比較した。得られた結果の概要を示す。1)骨密度:大腿骨では、KO群において非荷重により有意に低下した。腰椎では、いずれの群も変化はなかった。2)大腿骨骨幹部pQCT:KO群では非荷重により有意に皮質骨骨密度が低下し、皮質骨断面積および皮質骨幅が減少した。3)骨形態計測:KO群では非荷重により皮質骨の内骨膜面および外骨膜面の骨形成パラメーターが低下した。海綿骨では、野生型群において非荷重により骨吸収パラメーターは上昇したが、KO群では上昇しなかった。4)皮質骨mRNA:KO群では非荷重によりPTHRとオステオカルシンの発現が低下した。5)皮質骨免疫染色:PTHR陽性骨細胞数はKO群において非荷重により有意に減少した。以上の結果から、Aldh2KOマウスでは、非荷重環境下で、骨形成低下による皮質骨の骨量減少を認めた。この皮質骨における骨密度および骨構造の変化は、骨細胞におけるPTHRの発現低下と関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究4年目である平成30年度は、荷重の増減に応答する重要なシグナルとして、皮質骨の骨細胞における副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)を介したシグナルに着目し、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の両面から解析することができた。当初の計画に従って、おおむね順調に行うことがでた。今回、野生型マウスと比べ骨形成能が高く、骨組織においてPTHRの発現が高い特徴をもつAldh2遺伝子欠損(Aldh2KO)マウスを用いて、非荷重にすることで、骨細胞におけるPTHRの発現低下、オステオカルシンの発現低下、皮質骨の内骨膜面および外骨膜面の骨形成パラメーターが低下することを明らかにした。平成31年度も当初の研究計画に従い、荷重の増減に伴う骨代謝異常を是正するための骨代謝制御法について解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は本研究課題の最終年度にあたる。当初の研究計画に従い、荷重の増減に伴う骨代謝異常を是正するための骨代謝制御法について解析を進めていく予定である。本研究課題の研究成果を通じて、現在までに、非荷重により、1)カルシトニン受容体陽性の骨髄細胞が、mRNAレベルでもタンパクレベルでも増加していること、2)皮質骨の骨細胞における副甲状腺ホルモン受容体陽性の骨細胞が減少していること、を明らかにしてきたので、当初の研究計画に加えて、カルシトニンと副甲状腺受容体を介したシグナルにフォーカスを当てて、解析を進めていく方針である。
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