研究課題
初年度 (平成 27 年度) は、TRPV1 およびTRPV4 ノックアウトマウスを用いて急性炎症疼痛刺激後の行動学的変化と中枢神経系の変化を観察した。成熟雄性の野生型マウス、TRPV1 およびTRPV4 ノックアウトマウスの片側後肢足底に、急性炎症疼痛刺激としてホルマリンもしくは TRPV4 アゴニストの 4α-PDD を皮下注射し、注射後 0-10 分 (phaseⅠ) (ホルマリンによる直接の化学刺激による反応) および 10-60 分 (phaseⅡ) (炎症性メディエーターの遊離による感覚神経の刺激) における生体防御行動を計測した。また、注射後 90 分で灌流固定を行い、脊髄後角および視床下部室傍核 (PVN) における Fos タンパクの発現を免疫組織化学的染色法を用いて調べた。生体防御行動は、ホルマリン群の phaseⅠ で TRPV1 および TRPV4 ノックアウトマウスが、phaseⅡ で TRPV1 ノックアウトマウスが野生型マウスと比較して有意に減少した。4α-PDD 群は、いずれのマウスも有意差を認めなかった。Fos 陽性細胞数は、ホルマリン群の脊髄後角においては、いずれのマウスも有意差を認めず、PVN においては TRPV1 ノックアウトマウスが野生型マウスと比較して有意に減少した。4α-PDD 群の脊髄後角においては、TRPV4 ノックアウトマウスは野生型マウスと比較して有意に減少したが、PVN においては、いずれのマウスも有意差を認めなかった。以上より、ホルマリンによる直接の化学刺激の受容には TRPV1 および TRPV4 が、炎症性メディエーターを介した疼痛受容には TRPV1 が、4α-PDD による疼痛受容には TRPV4 が関与していることが示唆された。
3: やや遅れている
計画初年度 (平成 27 年度) は、TRPV1 およびTRPV4 ノックアウトマウスを用いて急性炎症疼痛刺激後の行動学的変化と中枢神経系の変化を観察した。これにより、ホルマリンによる直接の化学刺激の受容には TRPV1 および TRPV4 が、炎症性メディエーターを介した疼痛受容には TRPV1 が、4α-PDD による疼痛受容には TRPV4 が関与していることが示唆された。しかし、当初計画していた、TRPV1・V4 ダブルノックアウトマウスを用いた急性炎症疼痛刺激後の行動学的変化と中枢神経系の変化の観察に関しては、TRPV1・V4 ダブルノックアウトマウスの作出に成功しているものの、繁殖に時間を要するために実験に必要な個体数を得ることができず、現時点では実験に至っていない。
次年度 (平成 28 年度) においては、TRPV1・V4 ダブルノックアウトマウスを用いた急性炎症疼痛刺激後の行動学的変化と中枢神経系の変化の観察を行う予定である。具体的には、成熟雄性の野生型マウスおよびTRPV1・V4 ダブルノックアウトマウスの片側後肢足底に、急性炎症疼痛刺激としてホルマリンもしくは TRPV4 アゴニストの 4α-PDD を皮下注射し、注射後 0-10 分 (phaseⅠ) および 10-60 分 (phaseⅡ) における生体防御行動を計測することと、注射後 90 分での脊髄後角および視床下部室傍核における Fos タンパクおよび c-fos mRNA の発現を免疫組織化学的染色法および in situ ハイブリダイゼーション法を用いて調べることを予定している。また、成熟雄性の野生型マウス、TRPV1 ノックアウトマウス、TRPV4 ノックアウトマウス、TRPV1・V4 ダブルノックアウトマウスを用いて慢性関節炎モデルであるコラーゲン抗体関節炎モデルを作成し、脊髄後角および視床下部室傍核における Fos タンパクおよび c-fos mRNA の発現を免疫組織化学的染色法および in situ ハイブリダイゼーション法を用いて調べることを予定している。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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