研究課題
身体組織局所に加わる物理的力刺激(メカニカルストレス)は過度でも、逆に欠失・不足しても老化・炎症の増悪因子となる。運動器、特に骨に着目すると、加齢による骨量減少に加え、これから宇宙社会を迎えるにあたり、無重力下での骨量減少が問題となってくる。骨量維持には、運動などのメカニカルストレスの重要性が経験的に知られているが、その詳細なメカニズムは明らかにされていない。我々は、骨細胞におけるメカノセンサー分子と思われるp130Casの役割に注目し、骨細胞特異的p130Casノックアウトマウスを作製したところ、このマウスが有意な骨量低下を示した。本研究では、[メカニカルストレス]-[メカノセンサーp130Cas]-[骨代謝]の関連について、in vivo実験・in vitro実験の両面から詳細なメカニズムを検討した。in vivoでの解析を行うために、骨細胞特異的p130Casノックアウト(Cas cKO)マウスを作製した。Cas cKOマウスとそのコントロールとして使用するマウス(Casflox/flox)の右下肢の坐骨神経・大腿神経切離を行い、片方の下肢のみに力学的負荷のかからないunloadingの状態をつくりだした。2週間のunloadingが最も有効だという結果をふまえ、それらマウスのレントゲン撮影、CTスキャンにて骨量の変化を評価した。また、その骨組織の標本を作製し、骨形態計測などを行い、骨組織における骨形成パラメーター、骨吸収パラメーターなどを含め解析した。坐骨神経・大腿神経切離による2週間のunloadingを行った下肢では、コントロールマウスでもCas cKOマウスでも、対側(神経切離を行っていない方の下肢)と比較して、骨量が著名に減少していた。コントロールマウスで骨吸収の著名な促進がみられたものの、Cas cKOマウスでは骨吸収の増強が抑制されていた。この結果から、unloadingによる骨吸収の増強は骨細胞のCasが重要な役割を担っていることが示唆された。
すべて 2017
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J Orthopedics Rheumatol.
巻: 4 ページ: 01-06
10.13188/2334-2846.1000034