研究課題
急性高血糖も慢性の高血糖状態と同様に血管障害のリスク因子であることが示唆されている。急性高血糖を周術期にどのようにコントロールすべきか麻酔科医にとって課題となる。一過性高血糖状態でも,血管内皮障害に基づく心血管イベントが増加することが示唆される。基礎に血管障害を有する患者の周術期管理において,どのような管理を目指すべきかの目標を示すことは重要である。雄性Sprague-Dewleyラットを対象として,ペントバルビタールの静脈内持続投与(4mg/kg/h)で麻酔を維持し,終末呼気二酸化炭素分圧を35~40mmHgに維持するように調節呼吸を行った。脳軟膜血管を直接観察するために,頭に頭窓(Closed cranial window)を作製し,頭窓下にある血管を生体顕微鏡で,各々の血管径を測定する。昨年度は,正常ラット急性高血糖負荷モデルにおける脳血管の内皮依存性および非依存性血管拡張に及ぼす影響を検討した。急性高血糖負荷はグルコースを急性負荷して作成し,急性高血糖負荷で内皮依存性血管拡張は有意に抑制されるが,内皮非依存性血管拡張は影響を受けず、インスリンで血糖を正常化すると,内皮依存性血管拡張は回復することを示した。本年度は、脳血管内皮障害のメカニズムがどういうものか解明するために、従来言われている酸化ストレスとの関係を明らかにした。NADPH oxidase inhibitorを用いて検討したところ、内皮依存性血管拡張は回復することから、酸化ストレスの関与が示された。また、全身麻酔薬の影響をプロポフォールとデスフルランで検討した。抗酸化作用が強いと考えられるプロポフォール麻酔下と、デスフルラン麻酔下では、影響の差がみられた。
2: おおむね順調に進展している
昨年まで、正常ラット急性高血糖負荷モデルにおける脳血管の内皮依存性および非依存性血管拡張に及ぼす影響の検討では、内皮依存性血管拡張(アセチルコリン10-6M~10-5M),内皮非依存性血管拡張(アデノシン10-5M~10-4M)ならびにインスリンによる血糖コントロール後の評価を行った。その結果として、急性高血糖は,脳血管において血管内皮機能障害を引き起こすことが確認された。また、その障害は,インスリンによる血糖の正常化で回復させることができることがわかった。この脳血管内皮障害は、NADPH oxidase inhibitorで回復することから、酸化ストレスが原因であることが証明された。また、抗酸化作用の強いプロポフォール麻酔で脳血管内皮障害が軽減することから、麻酔薬の選択が脳血管障害に影響を与える可能性が示唆された。
急性高血糖による,脳血管障害のメカニズムが酸化ストレスによることが証明され、抗酸化作用の強いプロポフォール麻酔によって脳血管内皮障害が軽減することが示されたので、周術期管理の戦略確立のために、他の併用される可能性のある各種薬物(抗血小板薬・鎮静薬等)との相互作用の検討に入る予定である。
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