研究実績の概要 |
脳波信号をその遅延時系列信号と対で2次元プロットしたポワンカレプロット分布の定量化(ポワンカレ値(P):SD1/SD2)がspectral edge frequency (SEF95)と良い相関を示し、種々の麻酔薬において麻酔深度指標となりうることを報告した。 しかし、浅い麻酔深度では、測定脳波に含まれる筋電図等の信号の影響が大きく、BIS値とは乖離する.私たちは、リアルタイムで、BISモニタからの出力脳波を、周波数解析、並びにbispectral analysisを施行し、同時に、フーリエ解析連動ポアンカレプロットスコア(Fc-PIS)として、周波数帯域毎のポワンカレプロット解析を行い、麻酔深度を評価するソフトウェアを開発した. その結果、浅麻酔時の測定脳波の中ー高周波帯域は筋電図のpowerが大きく、 BISとポワンカレ値の関係は2相性になることが明らかとなった. 従って Poincare plot定量化法を用いた麻酔深度解析には、高周波数レベルに特化した補正を加える必要が生じた. この今回開発したFc-PIS 解析ソフトを用い、脳波ポワンカレプロットを周波数帯域毎に階層化し、浅麻酔領域での検討を行い、BIS値を算定するアルゴリズムを新たに作成した.そして、その有用性を検討した.全周波数帯域(0.5-47Hz)のポワンカレ値(P0)と20-30Hz帯域のポワンカレ値 (P3)を用い、30-50Hzのtotal power比で重み付けしてBIS算定式を作成し、10症例、23,320ポイントの麻酔脳波データに関して、この算定式を用いて推定したFc-PISを、BISモニター由来のBIS値と比較検討した結果、良好な相関関係が得られる結果を得た. 脳波ポワンカレプロット解析を周波数帯域で階層化して応用することで、筋電図の影響が強い浅麻酔域の解析が可能となり、更に良好なリアルタイム麻酔深度モニタリングが達成できる可能性が示唆された. これらの成果は、本年度、論文及び学会発表において公開した(Anesthesiology 2018, J Clin Neurosci 2017等)
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