研究実績の概要 |
モルモット摘出心を用いて、ランゲンドルフ灌流実験を行った。三環系抗うつ薬アミトリプチリンを灌流液に溶解し、その陰性作用に対するアルカリ化と脂肪乳剤の効果を定量的に比較検討した。ヘパリン1000単位とペントバルビタール(120 mg/kg)の腹腔内投与により十分な麻酔を行ったうえで、肋骨を切断し心臓を摘出した。摘出した心臓はすぐに4℃以下に冷蔵された心停止液(NaCl 120 mM, KCl 30 mM)に入れて心停止させ、大動脈をトリミングした上でランゲンドルフ法により逆行性の心臓灌流を開始した。灌流液は95% O2 - 5%CO2でバブリングしたKrebs-Henseleit液を標準液とした。脂肪乳剤としてはイントラリピッド輸液20%を使用し灌流液に対して5 - 20%の割合で混合し1-4%リピッド溶液と表記した。アルカリ化溶液は、NaHCO3濃度を33 mMに上げてpH 7.55とした。測定項目は心拍数(HR),左室駆出圧(LVDP), ECGでのQRS時間とした。 アミトリプチリン(1-10 μM)は、濃度依存性にHR,LVDPを抑制しQRS時間を延長させた。次にアルカリ化溶液とリピッド溶液の効果を検討した。まずアミトリプチリンを15分間灌流した後に、同濃度のアミトリプチリンを溶解したアルカリ化溶液またはリピッド溶液を灌流した。アルカリ化溶液は、1-5μMのアミトリプチリンによる心抑制を改善させた。しかし10μMのアミトリプチリンによる心抑制には効果がなかった。これに対して脂肪乳剤は検討した最小濃度5%でも1-10μMすべの濃度のアミトリプチリンの心抑制に対して回復効果を示した。その効果はアルカリ化溶液よりもはるかに大きかった。これらの結果は、アミトリプチリンの心毒性に対して脂肪乳剤はアルカリ化療法よりも有効である可能性を示唆すると考えられた。
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