研究実績の概要 |
三環系抗うつ薬中毒の心毒性に対する脂肪乳剤による治療の有効性をアルカリ化療法という確立された治療法と比較検討する。本研究はin vivoモデルでの検討で摘出心を用いたランゲンドルフ灌流実験で心機能に対する効果を検討し、心筋細胞のNa+チャネル記録をパッチクランプ法で行い両療法の効果比較し機序解明に繋げることを目的として研究を実施した。三環系抗うつ薬としてアミトリプチリンを用いた。 (1)in vivoモデルでの検討ではアミトリプチリンの静注で血圧・心拍数は低下し、QRS幅は延長した。血圧・QRS延長に対しては、脂肪乳剤はアルカリ液よりも有意に高い回復効果を示した。 (2)摘出心を用いた灌流実験では、測定項目を左室駆出圧(LVDP)、心拍数(HR)、最大dp/dtと心電図上のQRS幅として検討した。アミトリプチリンは濃度依存性(1-10 μM)に心機能を抑制しQRSを延長させた。これに対してNaHCO3でpH7.55に調整したアルカリ溶液は有意な回復効果を示さなかったが、脂肪乳剤混合液(1-2%)はLVDP、最大dp/dtに有意な回復効果を示した。 (3)単離心筋細胞Na+チャネル記録による検討では、アミトリプチリン(0.1-30 μM)を各溶液に溶解してNa+電流の抑制を調べた。電流を50%に抑制する50%Inhibition Concentration (IC50)」は、標準液、アルカリ溶液、1%リピッド液、2%リピッド液でそれぞれ 0.39, 0.75, 3.2, 6.1 μM であり脂肪乳剤は著明な効果を示した。Use-dependent blockに対しても、脂肪乳剤はアルカリ溶液に比較して有意に大きな効果を示した。以上の結果を国内・国際学会で発表した。また医学英文誌に掲載された。
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