研究課題/領域番号 |
15K10524
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
上園 晶一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10291676)
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研究分担者 |
木田 康太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70385318)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心停止 / 心肺蘇生 / イソフルラン / プロポフォール |
研究実績の概要 |
突然の心停止は世界的に主要な死因の一つである。自動体外式除細動器や蘇生後の低体温療法といった心肺蘇生法の進歩にもかかわらず心停止・心肺蘇生後の死亡率は非常に高く、新しい治療方法の開発は急務である。 蘇生後の患者は低体温療法によるシバリングの予防、痙攣発作の治療や気管内挿管の苦痛の軽減といった治療や苦痛の緩和のためしばしば鎮静剤の投与を受ける。しかし蘇生後患者の意識管理や鎮静剤の使用に関する研究はなく、漫然と鎮静剤が選択され投与されているのが現状である。本研究では心停止・心肺蘇生後の鎮静剤の選択が予後に与える影響を明らかにすることを目的としている。 研究実施計画に基づき、蘇生後の鎮静剤投与が蘇生後の生存率に与える影響を調べた。具体的には、麻酔下にマウスに気管内挿管後、動脈圧、中心静脈ラインを確保し塩化カリウム投与により心停止を起こす。8分の心停止後、人工呼吸、エピネフリンの持続投与を開始し胸骨圧迫(約300回/分)しながら蘇生行為を行った。これまでの研究結果から、心停止・心肺蘇生後10分後から開始した1.0 MACのイソフルランの吸入により、心停止・心肺蘇生後のマウスの10日間の生存率が改善することを確認した。これらの結果をもとにイソフルランとプロポフォールによる鎮静が蘇生後の予後に与える影響について比較検討を行っている。 当該年度は、まずイソフルランの投与設備を確立した。さらに、プロポフォールの確実な投与方法について検討を重ね、最終的な方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの心停止・心肺蘇生モデルの作成は問題なく行われており、蘇生後のイソフルランの吸入装置の設置は完了している。しかしながら、プロポフォールの確実な持続投与法を確立するのに、時間を要したため、プロポフォール投与群の実験が予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
① 平成29年度は、引き続きプロポフォールの蘇生後の投与が生存率に与える影響について調べ、イソフルランによる鎮静の影響との比較検討を行う予定である。 ② 蘇生後の鎮静剤投与による脳保護作用を明らかにするため、神経学的機能の評価、脳虚血後の神経細胞障害の指標として用いられる血清neuron specific enolase(NSE)、S100Bの測定を行う予定である。 ③ 蘇生後、体内埋め込み式の動脈圧測定送信機のカテーテルを大腿動脈に挿入し、動脈血圧の変化を連続して記録する。イソフルラン、プロポフォールによる鎮静が蘇生後の動脈血圧に与える影響を明らかにする予定である。 平成29年度の実験は上記の実験計画について遂行し、データ解析を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の支出分だけみると予定通りであったが、前年度からの繰越分について消化できなかった。その原因は、プロポフォール投与群の症例数が予定よりも少なかったからである。
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次年度使用額の使用計画 |
プロポフォール投与法が当該年度に確立できたので、次年度には予定通り、プロポフォール投与群の症例数を達成できる見込である。繰越金は、ほぼその実験に充てることになる。
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