研究課題/領域番号 |
15K10525
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
坂本 篤裕 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30196084)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | micro RNA / 遺伝子発現 / 麻酔 / 全身性炎症反応 / 発達形成 / 虚血再潅流 |
研究実績の概要 |
microRNA(miRNA)が全身麻酔の種類によって如何に発現し、または影響を受けるかを種々の状況下で観察し、従来の体内遺伝子発現変動との関連を検討するため、まず前頭前野、海馬、視交叉上核等の中枢神経系ならびに、肝臓および肺にmiRNA発現の確認と麻酔による発現変化を確認した。次に発展研究として、主に3つの研究から成果を得た。1)脳発達期におけるセボフルランの影響を検討するため、幼若期ラットにセボフルラン麻酔を施行すると、成長後の不安増強様行動が惹起され、その機序にmo-miR-632等のmiRNA発現変動が関与する可能性が示唆された。2)全身性炎症反応時の麻酔薬による影響を検討するために、ラットにlipopolysaccharide(LPS)を投与し、肺障害の程度と麻酔による肺保護効果を調べた。LPS投与により呼吸機能は障害され、miR-155やmiR-let7i等のmiRNA発現が変動し、セボフルラン麻酔により、miRNA変動が調整され、肺保護効果が示された。3)臓器虚血による障害に及ぼす麻酔の影響を検討するために、ラット肝臓の虚血再潅流モデルを作成し、虚血プレコンディショニング(IPC)と麻酔プレコンディショニング(APC)による影響を比較した。虚血再潅流障害により肝機能障害が惹起され、多くのmiRNAが変動したが、IPCおよびAPCは肝保護効果とともに、虚血保護に働くとされる共通のmiRNAの調整を示し、IPCと同様の機序による麻酔薬のmiRNAを介した肝保護効果が示唆された。いずれの結果も麻酔薬によるmiRNA調整と、種々の生体侵襲時の麻酔薬による臓器保護効果について新知見を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各臓器におけるmiRNA発現を測定でき、麻酔薬による影響が検討できた。麻酔薬の違いによる各臓器内発現のmiRNA定量を計画していたが、28年度以降に予定していた脳発達に及ぼす麻酔薬の影響、全身性反応時の麻酔薬の影響および、虚血再潅流障害時の麻酔薬の影響に関する研究が順調に進んだため、こちらを優先し、新知見が得られた。27年度当初の計画については、28年度に順調に実行されると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度以降は、まず27年度当初に計画していた麻酔薬の相違による各種臓器おけるmiRNA発現変動の相違を検討する。ついで28年度に先行した研究により得られた知見、すなわち、中枢神経系発達時期における影響、全身性炎症反応時における影響、虚血再潅流障害時における影響について、麻酔薬の相違による影響の違いを比較検討する。また、血中miRNA測定と各臓器miRNA発現を比較検討し、臨床応用に向けた準備を行う。
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