研究課題
microRNA(miRNA)が全身麻酔の種類によっていかに発現にし、あるいは影響されるかを全身重要臓器において包括的に測定・比較し、従来測定してきた体内遺伝子発現(messenger RNA: mRNA)との関連を検討してきた。初年度に2年度以降に計画していた5つの研究のうち、①全身性炎症反応時の麻酔薬の影響と体内遺伝子発現、②脳発達に及ぼす麻酔薬の影響とmiRNA発言の関連検討、虚血再潅流障害時の麻酔薬とmiRNA発現の関連検討という3課題の結果が得られたため、さらにこの詳細について初年度計画のさらなる改善を試みた。本年度は、特に中枢神経系の視交叉上核(SCN)における日内変動リズム遺伝子であるPer2遺伝子発現と麻酔薬の関連を調べ、相互の遺伝子発現変動の関連性を検討するための基礎的研究を行った。主な結果として、①mouse脳を用いた研究により、吸入麻酔薬によるPer2発現抑制効果は、SCN内の全ての領域に及び、Per2転写に関わるCLOCKのプロモータへの結合活性を低下させ、その効果にGABA受容体が重要な役割を示している、②視交叉上核における日内変動遺伝子発現に及ぼす麻酔作用の分子的メカニズムを詳細に検討するために、均一で大量の細胞を提供できるcell lineを用いたin vitroでの実験系を確立した。培養細胞に対して麻酔効果を得るためには、細胞が神経細胞用の特性を持つことが必要であることを示しGT1-7:6D3を用いた実験系が麻酔薬の効果を検討できる系として確立できた。
2: おおむね順調に進展している
初年度に2年度以降に計画していた5つの研究のうち、①全身性炎症反応時の麻酔薬の影響と体内遺伝子発現、②脳発達に及ぼす麻酔薬の影響とmiRNA発言の関連検討、虚血再潅流障害時の麻酔薬とmiRNA発現の関連検討という3課題の結果が得られた。そのため、2年目にあたる本年度は、初年度に計画していた各種麻酔薬による全身麻酔に機序における体内遺伝子発現変動の関連を詳細に検討するため、麻酔薬による日内変動変化と日内変動遺伝子の発現について関連づけた検討を行い、また、より詳細な分子生物学的検討を行うための、cell lineを用いた麻酔機序解明の実験系を確立できたことは、最終年度の研究につながる。
本年度の研究結果、すなわちcell lineを用いた実験系を基に、日内変動遺伝子発現と麻酔薬の効果を関連づけ、発現変動機序のより詳細な検討と、miRNAが従来のmRNA発現といかに関連するかを検討する。また、麻酔薬によるmiRNA発現の変動を臨床応用するために、血液サンプルと筋組織を用いて、筋組織特異性miRNA変動が骨格筋および肝臓において、麻酔薬によりいかに影響されるかを測定し、プロポフォール症候群との関連性も含めて検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
Br J Pharmacol.
巻: 174 ページ: 386-395
Neurosci Res.
巻: 107 ページ: 30-37
10.1016/j.neures.2015.11.010.
Oncotarget
巻: 7 ページ: 26042-26056
Neurosci Lett.
巻: 620 ページ: 163-168
10.1016/j.neulet.2016.04.005.