microRNA (miRNA) が全身麻酔薬の違いによっていかに発現し、あるいは影響されるかを全身重要臓器において包括的に測定・比較検討し、従来測定してきた体内遺伝子発現 ( messenger RNA: mRNA) との関連を検討してきた。初年度および2年度の研究において、①幼若期の全身麻酔が成長後の不安増強様行動を惹起する、②全身性炎症反応時に全身麻酔が肺保護作用を示す、③臓器虚血時に全身麻酔が再潅流障害保護効果を示す、④全身麻酔が日内変動リズムを変化させることに、miRNAの発現変動が関連することの結果を得られた。これらの結果をもとに、2年度以降に計画した研究として、本年度は麻酔薬自身および虚血再潅流時のmiRNA発現変動と惹起される全身効果への機序について2つの実験系を用いて詳細に検討した。主な結果として、①腎虚血再潅流障害モデルにおいて、麻酔プレコンディショニングは虚血プレコンディショニングと同様な保護効果を示すが、異なるmiRNA発現にも関わらず同一のPTEN-PI3K-Akt pathwayをターゲットとして効果を示すことが示唆された。②プロポフォールとセボフルラン麻酔による血液および筋組織に於けるmiRNA発現を比較検討することにより、臨床における血液中のmiRNA測定が役立つことに加え、プロポフォール症候群の機序の一因として、筋特異性miRNA発現の差を示唆する所見を得た。
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