研究課題/領域番号 |
15K10527
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
鬼塚 信 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (20264393)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロポフォール / アポトーシス / ミトコンドリア / 細胞内pH / イオントラッピング |
研究実績の概要 |
プロポフォールの副作用として、プロポフォール症候群が問題視されるが、その機序は解明されていない。そこで、プロポフォールのミトコンドリアへの影響を中心とした細胞毒性機序を検証した。 方法:Hela細胞を検体とした。プロポフォールのミトコンドリアへの影響を検証すべく、ミトコンドリア電位、ミトコンドリア電位を形成する細胞内およびミトコンドリアそれぞれのpH、カルシウムイオン濃度を細胞内イメージング法で測定した。アポトーシスについて、DNAフラグメンテーションを電気泳動法で、カスパーゼ活性を合成基質法で測定した。 結果:プロポフォールは、合成基質法にてカスパーゼ9およびカスパーゼ8、そしてカスパーゼ3を濃度依存性に活性化した。プロポフォールは、ミトコンドリア電位を脱分極するとともに、細胞内pH,ミトコンドリアpHを著明にアルカリ化し、カルシウム濃度を増加させ、ミトコンドリア経路のアポトーシスを誘導した。これらの結果は、同じフェノール類に属しプロポフォールと構造式が類似するアセチルサリチル酸と酷似していた。 結語:プロポフォールは、弱酸としてイオントラッピングにより細胞内およびミトコンドリアの水素イオン濃度(pH)を枯渇することで、ミトコンドリア経路のアポトーシスによる細胞毒性を誘発しうる可能性が示唆された。他方、興味深いことは、プロポフォールがカスパーゼ8も活性化することすなわち、デスレセプター経路も活性化しうることで、2つの経路でアポトーシスを起こしうることである。このことは、ワーンブルク効果すなわち、アポトーシスを起こさないようにミトコンドリア活性を抑制しているのではないかとされる癌細胞に有効かもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロポフォールの持つアポトーシス誘導作用機序を解明したとともに、これにより、プロポフォールを用いた抗がん作用の証明等新しいテーマを得ることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、果たしてミトコンドリア経路あるいはデスレセプター経路が抗癌作用として有効なのか、どちらの経路がプロポフォールの持続投与で癌細胞の転移を低下しうるのかを解明したい。さらに、他の局所麻酔薬や揮発性麻酔についても比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費に申請したとうりの機器を購入したが、購入した機器が、科研費に申請した定価よりも、安かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品代に繰り越す計画である。
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