癌患者にどのような麻酔法、麻酔薬が最適なのかを検索すべく、リドカイン等の局所麻酔薬、プロポフォール等の静脈麻酔薬、そして、セボフルラン等吸入麻酔薬の培養腫瘍細胞に対する影響を検証した。リドカイン等の局所麻酔薬あるいはプロポフォールでミトコンドリアが脱分極することを報告した。そこで、今回はプロポフォールのミトコンドリアへの影響を中心とした抗癌作用機序を検証した。 方法:Hela細胞を検体とした。プロポフォールのミトコンドリアへの影響を検証すべく、ミトコンドリア電位、ミトコンドリア電位を形成する細胞内およびミトコンドリアそれぞれのpH、カルシウムイオン濃度を細胞内蛍光イメージング法でリアルタイムに測定した。アポトーシスについて、DNAフラグメンテーションを電気泳動法で、チトクロームCのミトコンドリアからの漏出をウェスタンブロット法で、カスパーゼ活性を合成基質法で測定した。 結果:プロポフォールは、プロトノフォアとして作用し、培養腫瘍細胞においてミトコンドリアにおけるプロトン濃度勾配を消失させることでミトコンドリア電位を脱分極し、ミトコンドリア経路のアポトーシスを誘導しうることを。これらの結果は、同じフェノール類に属しプロポフォールと構造式が類似するアセチルサリチル酸と酷似していた。 結語:プロポフォールは、プロトノフォアとしてミトコンドリアのプロトン濃度勾配を消失することで、アスピリンに類似したミトコンドリア経路のアポトーシスによる抗癌作用を発揮しうる可能性が示唆された。
|