研究課題/領域番号 |
15K10529
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
橋場 英二 弘前大学, 医学部附属病院, 准教授 (10374844)
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研究分担者 |
葛西 俊範 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (00647414) [辞退]
斎藤 淳一 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (90647413)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 敗血症 / ブドウ糖初期分布容量 / 心臓前負荷 / 輸液管理 |
研究実績の概要 |
中心静脈圧(CVP)に代わる心臓前負荷の指標としてブドウ糖初期分布容量(IDVG)の重症敗血症治療における有用性を検討することを目的に、H29年度は、H28年度に引き続き、「敗血症モデルにおける輸液負荷実験(計画A-2)」を行った。 方法:まず、昨年度の懸案であった豚の成熟度によるエンドトキシン(ET)の効果の違いは、ETの投与量をその効果を見ながら増量する方法で安定したET敗血症モデルが作成できることが判明した。輸液負荷は敗血症性ショック状態となった後に乳酸化リンゲル液(ハルトマン液 30ml/kg)を1時間で負荷する方法で行った(n=5)。 結果:ET投与4時間目までに著明な循環抑制が認められ、COはBaselineを100%とすると49.5±10.2%まで低下し、HM負荷で63.9±12.0%に有意に上昇した。しかし、負荷2時間後には55.0±8.4%まで低下した。一方、IDVG-Index(IDVG/BW)はBaseline(100%)に比べ、4時間目に92.5±7.2%まで有意に低下し、輸液負荷で102.0±7.9%まで有意に上昇したのち、負荷2時間後には86.6±7.5%まで低下した。また、CVP、SVVの同様の経時的変化はそれぞれ、100%→99.4±36.1%→120.2±25.8%→118.4±31.7%、100%→240.3±108.3%→167.7±30.3%→176.0±32.9%であった。敗血症性ショック時IDVG-indexはCOと同様に低下し、輸液負荷でCOと同様に上昇するが、その変化率はCO程大きくなく、むしろSVVの方が大きな変化を示した。また、IDVGは輸液負荷2時間後には負荷後にもかかわらず更に低下を示した。これは、IDVGの指し示す体液量は心臓前負荷に極めて近い細胞外液量ではないが、細胞外液量全体でもなく、中心部の細胞外液量であることが改めて示唆された。今後、このIDVGの多寡と敗血症の病態との関係の解明も重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
豚エンドトキシン(ET)敗血症モデルの作成に関して、豚の成熟度によるETの効果が異なることが判明したこと、HES製剤がICG測定に影響を与えることなどが判明したこと、SSCG2016で敗血症時の初期輸液負荷法が改定されたことなどを受け、実験の方法に変更を余儀なくされたため。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究で、敗血症初期治療時の輸液反応性とIDVGの関係の検討を行う。[方法]敗血症、敗血症性ショックの患者を対象とし、SSCG2016に則って平均血圧65mmHg以上を保つために30ml/kg以上の晶質液の投与とカテコラミンの投与が必要な患者において、IDVG、COなどを測定する。その後、輸液反応性の判断にmini-fluids challengetestを行う。その結果心拍出量が15%以上上昇したものを輸液反応性ありと判断する。そして、輸液反応性の有無とIDVG-index(IDVG/理想体重)やCVP前値の輸液反応の予測可能性についてROCを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の変更しつつ動物実験を施行し、消耗品などをできるだけ抑えて無駄のないように研究費を使用した。また、実験計画が遅れており、平成30年度も引き続き研究を行うため、申請額よりも少ない使用額となった。
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