研究課題/領域番号 |
15K10530
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
川前 金幸 山形大学, 医学部, 教授 (70254026)
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研究分担者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急性炎症応答 / NF-kB / 脂質性情報伝達機構 / 結合蛋白 |
研究実績の概要 |
炎症応答は個体により大きく異なるので、生体細胞を用いて炎症等を定量的に解析することが出来れば、生体急性炎症メカニズムの解明ひいては臨床応用に非常に有用と思われる。生体侵襲においては、炎症応答を司る主要転写因子NF-kB経路が重要な役割を果たすことから、申請者らの研究グループは、細胞内二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)によるNF-kB制御機構を解明するため、生体急性炎症とその後の回復過程を解析するための研究を行ってきた。そして、ゼータ型DGK(DGKζ)の発現を抑制することにより、NF-kB転写経路が活性化され、その転写調節を受けるTNFαやRANKLのmRNA発現が増加することを報告してきた。本年度はさらに検討を進め、新規DGKζ結合蛋白として同定した Nucleosome assembly protein 1 (NAP1) -like 1 (NAP1L1) および NAP1-like 4 (NAP1L4) がNF-kB転写活性に対して及ぼす影響を siRNAノックダウン実験により解析した。NF-kB はIkBαと結合し細胞質に係留されているが、TNF-α刺激によってIBαが分解されると核内に移行し、転写活性を発揮する。本年度の研究から、NAP1L1ノックダウン細胞においては、ルシフェラーゼアッセイにてNF-kB転写活性が減少することが明らかとなった。この時、ウェスタンブロット解析によりIkBα分解が抑制されることからNAP1L1 の減少によりNF-kB は細胞質に係留されやすくなると考えられた。一方、NAP1L4ノックダウン細胞では、IkBα分解およびNF-kB転写活性に対する影響は認められなかった。以上より、DGKζ結合蛋白はNF-kBに対して異なる作用を及すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、炎症応答のマスター転写因子とされるNF-kBの制御機構について、申請者らがこれまで取り組んで来た細胞内情報伝達制御因子DGKファミリーに焦点を当て、急性炎症応答の分子機構の解明を目的としている。これまで、DGKζのノックダウン実験系およびDGKζ-KOマウスから作製したMEF細胞系を確立し、DGKζ発現減少によりNF-kB経路が活性化されることが明らかにしてきた。本年度はこれまでの研究を発展させ、新規DGKζ結合蛋白NAP1L1およびNAP1L4がNF-kB経路に及す影響を解析し、着実な進展が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに研究を進め、NF-kB経路に対するNAP1L1およびNAP1L4の作用の違いがどのようにして生じるのか、またNAP1L1によって制御されるNF-kB誘導遺伝子の同定を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
NF-kB転写活性の測定に関連して、新規実験として取り組んだChiPアッセイの確立に時間を要してしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新規実験として開始したChiPアッセイを中心とした実験を確立し、転写因子NF-kBにより誘導される遺伝子の同定を行う費用に使用する予定である。
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