研究課題
炎症応答は個体により大きく異なるので、生体細胞を用いて炎症等を定量的に解析することが出来れば、生体急性炎症メカニズムの解明ひいては臨床応用に非常に有用と思われる。生体侵襲においては、炎症応答を司る主要転写因子NF-kB経路が重要な役割を果たすことから、申請者らの研究グループは、細胞内二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)によるNF-kB制御機構を解明するため、生体急性炎症とその後の回復過程を解析するための研究を行ってきた。これまでの研究により、1)ゼータ型DGK(DGKζ)の発現を抑制することによりNF-kB転写経路が活性化され、その転写調節を受けるTNFαやRANKLのmRNA発現が増加すること、2)新規DGKζ結合蛋白として同定した Nucleosome assembly protein 1 (NAP1) -like 1 (NAP1L1) および kNAP1-like 4 (NAP1L4) がNF-kB転写活性に対して及ぼす影響を解析した結果、NAP1L1ノックダウン細胞においては、ルシフェラーゼアッセイにてNF-kB転写活性が減少することが明らかとなった。本年度の研究では、このNFkB制御機構におけるNAP1L1の役割をさらに詳細に解析し、NAP1L1ノックダウン細胞では、TNFα刺激後、抗アポトーシス作用をもつMcl-1の遺伝子転写が選択的に抑制されること、そしてその結果、ミトコンドリア膜電位が減少しアポトーシスが促進することを新たに見出した。その他、NF-kBと同様に、炎症応答に重要な役割を果たすp53についても研究を進めており、NAP1L1およびNAP1L4がp53の選択的な細胞応答にも関与する可能性が示唆されてきた。
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J Cell Physiol.
巻: 232 ページ: 617-624
10.1002/jcp.25461