研究課題/領域番号 |
15K10533
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高澤 知規 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (30400766)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 周術期管理学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、昨年度に引き続き、老化促進マウスであり軽度認知機能障害(mild cognitive impairment: MCI)と同様の症状を示すSenescence Accelerated Mouse-Prone 8(SAMP8)と、正常老化を示すSAMR1を用いて術後モデル動物を作成し、自発行動量と空間作業記憶が評価できるY maze testにより、抗菌薬のミノサイクリンに術後認知機能障害(POCD: Postoperative cognitive dysfunction)の予防効果があるかを調べた。SAMP8の手術群は、観察群と比較して自発的交替率が低下したが、ミノサイクリン群では低下しなかった。SAMR1では、手術群と観察群の自発的交替率に差はなかった。 手術侵襲によって抹消組織でサイトカインが放出されると、数時間後には脳内のミクログリアに変化が生じることが予想される。そこで、ミクログリアに選択に発現するIba1 をプロモーターとしてEGFPを発現させたIba1-EGFP マウスを用いた肝臓切除術後モデル動物を作成し、大脳皮質のミクログリアの形態を手術の前後で比較した。この実験には当施設の共同利用機器部門に設置されている多光子励起レーザー顕微鏡を用いた。Iba1-GFPマウスでは手術後に、ミクログリアの突起のうち伸縮した突起の割合が増加した。肝臓切除術後に伸縮したミクログリアの突起が増加したことは、手術侵襲によるミクログリアの活性化を示唆する。 膝関節全置換術を受ける患者を対象としたMINOPOC-Jトライアルを並行して実施し、抗菌薬のミノサイクリンが術後の認知機能に与える影響を調査中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス肝臓切除術後モデルを用いた行動学実験は、ほぼ終了した。また、多光子励起レーザー顕微鏡を用いた、手術前後のミクログリアの挙動を比較する実験も完了した。動物実験と並行して実施している臨床研究は、症例登録のスピードが想定より遅いが、介入が原因と考えられる有害事象は発生せず安全に行えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ミノサイクリンがPOCDを予防するメカニズムを解明するため、免疫染色やELISA法によるサイトカイン値の測定を行う。また、臨床研究は予定症例数に到達するよう症例を重ねていく予定にしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りの支出であったが、非常に少額ながら次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費に充てる予定にしている。
|