研究実績の概要 |
虚血再灌流傷害時に発生する細胞傷害の一つにTransient receptor potential canonical (TRPC) チャネル(細胞内Ca2+濃度の低下をトリガーとして一過性に活性化されるイオン流入チャネル)を介して誘発されることを単離灌流細胞レベルでのCa2+パラドックスによる細胞傷害モデルで報告してきた。本研究ではin vivoラットにおいてTRPC チャンネルブロッカーの前処置により、虚血再灌流障害が抑制されるかどうかを検証した。まずは野生型ラットに心臓マイクロダイアリシス法を適応して、冠動脈閉塞開放時の心筋間質逸脱タンパク質濃度応答を測定した。その結果、TRPCチャネルブロッカー(SKF96365, 2-APB)を前処置することにより、無処置群に比してその応答は抑制された。また、吸入麻酔薬暴露によってもその応答は抑制され、その程度はTRPCチャネルブロッカー前処置したものと同等であった。さらに、TRPC チャネル機能の過剰誘導を目的にTAC手術(transverse aortic constriction)を前処置したラットを作成し、同様の検討を行った。TAC手術処置下ラットの冠動脈結紮開放時の心筋間質ミオグロビン濃度応答は無処置のラットと比較して差は認められなかった。TAC手術後早期の致死性不整脈と冠動脈結紮を行う際の心筋虚血による死亡も加わり十分な数の実験個体数を確保できなかったため、TRPCチャネルブロッカーや吸入麻酔薬による応答変調については、今後の継続課題とすることとした。また、虚血再灌流時のアポトーシス応答とTPPCチャネルとの関係について検討する目的で、虚血再灌流時の心筋間質チトクロームC濃度応答を測定し始めたところで、研究期間満了となった。
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