研究課題/領域番号 |
15K10535
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内山 昭則 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00324856)
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研究分担者 |
藤野 裕士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50252672)
吉田 健史 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50725520) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経肺圧 / 肺傷害 / 人工呼吸 / ARDS / 呼吸性アシドーシス / 重炭酸ナトリウム / THAM |
研究実績の概要 |
これまで肺傷害に対する人工呼吸中に強い自発呼吸努力の発生によって経肺圧(=気道内圧ー食道内圧)が増大すると人工呼吸による肺傷害が進行することが分かっている。今回の研究では肺胞洗浄によって作成したARDS肺傷害モデルウサギを用い、人工呼吸下の自発呼吸努力レベルを調整することによって経肺圧を低くし人工呼吸による肺傷害の発生を軽減できる可能性を検討している。2つのアプローチを試みている。1つは人工呼吸条件の調整である。我々は適切なPEEPレベルを用いることによって経肺圧を軽減できる可能性を検討した。肺コンプライアンスが最も大きくなるPEEPレベルでは、それよりも低いPEEPを用いた場合よりも経肺圧が小さくでき人工呼吸関連肺傷害の発生が抑制できる可能性が判明した。2つめは血液の酸塩基平衡の調整である。まず、ICUの入室した一年間の人工呼吸患者の血液ガスと人工呼吸データを後方視的に検討しし、深鎮静下でも自発呼吸努力が小さくできずに一回換気量が大きくなっている場合に関連する因子を検討した。その結果、一回換気量に影響する因子は麻薬の使用と血液重炭酸イオン濃度であることが判明した。麻薬の使用は自発呼吸努力を大きくする方向に働き、弱い相関ではあるが、血液重炭酸ガスイオン濃度の上昇が自発呼吸努力レベルの抑制につながるという結果となった。この結果を踏まえ、血液の酸塩基平衡の調整によって自発呼吸努力レベルの調整が可能かどうかの実験をウサギモデルを用いて行った。酸塩基レベルの調整には一般的な重炭酸ナトリウムをもちいたが、重炭酸ナトリウムは体内で二酸化炭素を生成するため、換気量の増大が必要になる可能性が高いため、二酸化炭素を発生しないアルカリ製剤としてTHAMを比較検討した。二酸化炭素吸入モデルではTHAMは重炭酸ナトリウムと比較してpHを調整しても換気量の増大が少ないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自発呼吸努力があり、かつ安定した肺傷害モデルを作成するのはむずかしく、モデルの庵的化が難しいため、実験が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
自発呼吸努力を残存され、かつ安定した肺傷害モデルを作成し、重炭酸ナトリウムとTHAM投与による酸塩基平衡レベルの調整によって肺傷害動物モデルにおいて人工呼吸関連肺炎の軽減が可能がどうかを検討したい。また、筋弛緩薬や人工肺の使用によって自発呼吸努力レベルの調整が可能かどうかも検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
自発呼吸努力の調整による酸塩基平衡の調整効果の実験で適切な障害度の肺傷害モデルウサギの作成が難しく、傷害モデルの作成プロトコールの作成に時間を要している。そのため、動物実験の進行スケジュールが少し遅延している。プロトコールの概要は予備実験によっておおよそは決定できてきている。
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次年度使用額の使用計画 |
傷害モデルの作成プロトコールの作成に時間を要している。そのため、動物実験の進行スケジュールが少し遅延しているが、作成プロトコールの決定しだい、傷害モデルを用いた重炭酸ナトリウムとTHAMによる酸塩基平衡の調整効果を検討する予定である。
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