研究課題/領域番号 |
15K10537
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
白神 豪太郎 香川大学, 医学部, 教授 (20235740)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 鎮静度 / 鎮痛度 / 自動制御 / 麻酔後回復 / 麻酔後合併症 / 聴覚誘発電位 / 区域麻酔 |
研究実績の概要 |
1)麻酔後回復の検討 単顆人工膝関節置換術(UKA)患者を対象に術後24時間持続大腿神経ブロックを行った患者(n=68,cFNB)と単回大腿神経ブロック+関節周囲カクテル注入法を行った患者(n=60,LIA)で術後痛,術後悪心嘔吐(PONV),関節可動域,大腿四頭筋力低下,自立歩行所用日数などを比較した。LIAはcFNBよりも,大腿四頭筋力低下が少なく,自立歩行開始が早かったが,PONV頻度は高かった。鎮痛効果,大腿四頭筋力低下には差がなかった。傍脊椎ブロックと局所浸潤麻酔を併用した全身麻酔(GA)で行った乳癌手術患者(n=29)と同併用の鎮静(MAC)で行った乳癌手術患者(n=29)の麻酔後回復および術中の低血圧発生頻度を比較した。MACの方がGAよりも麻酔後回復が早く麻酔中の低血圧発生頻度が低かった。全身麻酔下成人鼠径ヘルニア手術患者を対象に腸骨鼠径・腸骨下腹神経ブロックを超音波ガイド法(US)で行った患者(n=16)とランドマーク法(LM)で行った患者(n=17)で術後の一過性大腿神経麻痺の発症頻度を比較した。USの方がLMよりも大腿神経麻痺の頻度が低かった。 2)鎮静度(痛み度)指標ならびに薬剤投与自動制御システムの検討 プロポフォール全身麻酔時の鎮静度(意識消失)指標として聴覚誘発電位に基づくaepEX値を用いた場合に,実測aepEX値とプロポフォール予測効果部位濃度との間に最適な関係(麻酔中に意識消失を保証するためのaepEX値とそれに対応するプロポフォール予測効果部位濃度の感度と特異性)を与える薬物動態モデルについて検討した。プロポフォールTCIにしばしば用いられているMarchモデルやSchniderモデルよりも,Barrモデルの方が感度と特異性が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)麻酔後回復の検討 病院再開発による手術室移転のため一時的にデータ取得に困難を伴った。 2)鎮静度(痛み度)指標ならびに薬剤投与自動制御システムの検討 病院再開発による手術室移転のため一時的にデータ取得に困難を伴った。手術室システム再構築の際,データをパソコンに落とす行程に混乱が生じ,一時的にデータが取得できなかった。aepEXモニタ電極の製造工程の不具合により,電極供給が一時的に行われなかった。既存aepEXモニタ機器が故障し,新機器購入までの間,データ取得ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)麻酔後回復の検討 麻酔後回復に及ぼす区域麻酔の術中鎮静・鎮痛度指標,麻酔後回復および術後痛やPONVなどの合併症に及ぼす影響についてのデータを蓄積する。 2)鎮静度(痛み度)指標ならびに薬剤投与自動制御システムの検討 鎮静度と麻酔薬投与,痛み度とレミフェンタニル投与との関連について基礎的データを蓄積する。血糖値が不安定となる大手術後患者でICUに入室する患者を対象に持続血糖モニター(iPro2)を行い,血糖値制御の数学的モデル構築のための基礎的データを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の物品費の主要なものは聴覚誘発反応測定器(aepEX PLUS)1台とデータ解析用コンピュータ1台である。コンピュータをもう一台購入予定であったが,現在は既存のものを使用している。当初,エントロピーモニターとコンピュータを接続しデータ取得を行う予定であったが,エントロピーモニターからのデータ取得に不具合があり解決に時間を要したたため,当該年度にはエントロピー電極購入を行わなかった。aepEX電極の供給途絶により同電極消費量が当初予測より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
データ取得・解析用のコンピュータを購入する。センサー電極を購入する。持続血糖測定器(iPro2)を購入する。
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