研究課題/領域番号 |
15K10541
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)
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研究分担者 |
杉浦 健之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20295611)
浅井 清文 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70212462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー / 高次脳機能 / 麻酔薬 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)の発症あるいは悪化の機序として、神経細胞におけるAβの蓄積、Aβの重合、Aβの重合を促進するGM1ガングリオシド(GM1)の増加、またアストロサイトにおけるAβ分解の抑制に注目をして研究を進めている。 培養神経細胞やPC12細胞を用いた研究により、プロポフォール、ミダゾラム、バルビタールは、GM1の発現を低下させ、Aβの凝集を抑制することを確認した。つまり、これらの3薬剤はADの病態を少なくとも悪化させないと考えられる。 ケタミンはアストロサイト内のネプリライシンの発現を抑制し、Aβの分解を抑制した。ハロペリドールはσ1受容体(σ1R)アンタゴニストであり、σ1Rを介して、アストロサイトにおけるGM1の分解を抑制し、細胞内のGM1の蓄積を促進する。また、ハロペリドールは、オートファゴゾームが蓄積を誘導し、細胞膜上のGM1を減少させ、アストロサイト内のGM1を増加させることが明らかとなった。この作用は、σ1Rを介してERK経路が活性化されることが明らかとなった。さらに、アストロサイト膜上のGM1の減少により、アストロサイト内へのAβの取り込みを抑制することがわかった。このことは、ハロペリドールによるADの悪化の可能性が示唆される。 正常ラットの脳においても、すべての薬剤で細胞実験と同様の結果を得た。アルツハイマーモデルマウスは、SP2マウスとTg2576マウスを交配して作成を試み、病理の変化を経時的に確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルツハイマーモデルマウスは、SP2マウスとTg2576マウスを交配して作成を試みているが、病理の変化が急速であり、どの時期に麻酔薬投与実験を行うのがよいのか、その時期の決定に時間を要しているため、課題の進捗がやや遅れている。条件設定が困難な可能性もあるため、高齢ラット、正常ラットを用いた検討を進めていくことも検討する。また、アルツハイマーモデルを他のモデルの導入も検討する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、アルツハイマーモデルマウス(SP2マウスとTg2576マウスを交配)を作成し、どの時期に麻酔薬投与実験を行うのがよいのか、その時期の決定を行う。 培養細胞を用いて、アストロサイトにおけるAβ分解能を低下させない薬物の発見を目指す。σ1RのアゴニストあるいはERK阻害薬を候補として、実験を進める。さらに動物を用いて、σ1RのアゴニストあるいはERK阻害薬のAβ分解能改善作用を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルツハイマーモデルの作成が遅れており、実験を継続するために要する費用を次年度に使用する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に実験を着実に進めることにより、速やかに使用していく予定である。
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