研究課題/領域番号 |
15K10545
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
坂本 英俊 帝京大学, 医学部, 講師 (90349267)
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研究分担者 |
藤本 萌 帝京大学, 国際教育研究所, 助手 (20750889)
福田 悟 昭和大学, 医学部, 教授 (30116751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 敗血症 / HMGB1 / 睡眠・覚醒 / メラトニン / 集中治療 |
研究実績の概要 |
松果体から分泌されるメラトニンは、日内変動や睡眠覚醒パターンと密接に関わっている。in vivoでのメラトニンの連続測定は睡眠覚醒のメカニズムを研究する上で重要な意味を持つ。我々は以前、HMGB1脳室内微量投与により覚醒期が減少し、non-REM睡眠が増加することを報告した。そこで、HMGB1脳室内微量投与後のメラトニン分泌の変化を検討するために、新しいメラトニン測定手法の確立を試みた。 正中上方から松果体へのアプローチでは、上矢状静脈洞が近接しており、出血によるダメージのリスクが高いという欠点があった。真横からのアプローチでは、松果体までの距離が長い事、特殊な回路および透析プローブが必要であるという欠点があった。どちらの方法も、測定を確立するまでに時間を要する欠点があった。今回、我々は、上記の手法を見直し、新手法による生体内マイクロダイアリシス法を確立した。 方法としては、雄Wisterラット(9週齢、330-380g)を使用した。右上方17度より松果体へアプローチをした。明期(8:00~20:00)と暗期(20:00~8:00)は12時間毎に設定した。潅流液は、リンゲル液を使用した。サンプルは30分毎に採取し、メラトニン分析には高速液体クロマトグラフィーを用いた。 結果としては、、4日間(n=8)および5日間(n=6)のメラトニン連続測定に成功した。我々の松果体左上方アプローチは従来の方法に比べ、松果体までの距離が短いため比較的失敗が少なく、出血によるダメージも少なかった。本研究の手法により測定したメラトニン分泌量は従来のデータと同程度であったため、代替できると判断した。 結論として、我々が開発した新メラトニン測定法は今後の睡眠・覚醒研究に有効と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メラトニンの連続測定の実験系の確立に予定より時間がかかった。従来の測定方法では、安定して測定するのに、時間がかかると思われたために、当初の予定とは異なり、新規のメラトニン測定の実験系を検討した。新規の実験系による連続測定の検証に時間がかかり、5日間の連続測定の目処は立った。当初の連続測定の精度を上げるために、さらなる改良が必要と思われた。 脳波の連続測定は、改良により、以前より測定精度が向上した。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症性脳症を来している患者では睡眠・覚醒リズムに大きな障害を生じている。メラトニン産生は視交叉上核によって厳格に調節されているので、メラトニン産生は視交叉上核の機能の間接的指標となり得る。メラトニンの連続測定の精度を改善した後、松果体に設置したマイクロダイアリシスにより、リアルタイムに測定したメラトニン産生がどのように変化するかを検討し、敗血症性脳症の視交叉上核への影響を検討する。 敗血症性脳症モデルは、これまで行ってきたHMGB1脳室内投与にて作成し、敗血症性脳症群とする。また、生理食塩水脳室内投与群をコントロール群とする。5日間連続でメラトニン測定、脳波・筋電図測定を行い、メラトニン産生、睡眠・覚醒サイクルへの経時的影響を明らかにする。メラトニン測定は、高速液体クロマトグラフィーで測定を行う。睡眠・覚醒サイクルはSleepSign Ver.3.0(既存)にて解析する。 さらに、鎮静法による差違(プロポフォール・デクスメデトミジン・ミダゾラム)および時間修正作用のあるメラトニンMT1・2受容体作動薬投与の睡眠・覚醒サイクルへの効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット購入費用、薬剤購入費用、シリンジ購入費用等が主な支出であったが、最終収支では、若干の誤差が生じ、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験は継続中のため、ラット購入費、薬剤費、透析プローブ等に使用する予定である。
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