研究実績の概要 |
【目的】ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤によるヒアルロン酸(HA)ゲルからのHA放出が、HESの物性により異なるかを検討すること【背景】近年、血漿増量製剤であるHES製剤が、血管内皮glycocalyxの構造を弱める危険性が指摘されている。本研究では、glycocalyxの成分であるHAとHESの物理的相互作用が、HESのglycocalyx構造におよぼす影響に関与するという仮説を立証するため、HESの物性がHAゲルからのHA放出におよぼす影響を検討した。【方法】テスト溶液は、0.9% NaCl溶液(PS)、2% Salinhes (平均分子量70,000のHES、固定電荷なし、SH)、2% Voluven (平均分子量130,000のHES、固定電荷なし、VL)、2% Venofundin (平均分子量130,000のHES、陰性に荷電、VF)とした。Syringe filterに0.5%HAゲル0.1 gを注入した。これにテスト溶液を0.1 ml/minの速度で30分間注入した。そのろ過液中のHA濃度を測定することにより、syringe filter内に含まれていたHAがろ過液中に放出された割合を算出した。【結果】ろ過液中に放出されたHAの割合は、PS:34 ± 7 (%, n=10), SH: 30 ± 5 (%, n=8), VL: 24 ± 7 (%, n=8), VF: 28 ± 9 (%, n=8) であった。VLにより放出されたHAの割合は、PSにくらべて小さかった(P = 0.02)。【考察】VLがPSにくらべてHAの放出を抑制した結果は、VLがHAの高分子構造を強める可能性を示している。このHESによるHAの放出抑制効果がSHおよびVFでは認められなかったことから、この作用がVLに特異的であり、VLとHAとの物理的相互作用によるものと考えられた。
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