研究課題
酸素環境が激しく変化する臓器である肺を特に取り上げて生体内レドックス環境が炎症反応の進展に果たす役割の解明を目指すことが本申請の目的である。生体内レドックス制御因子であるチオレドキシン(thioredoxin, TRX1)を中核として、その結合タンパク質thioredoxin-interacting protein(TXNIP)と低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1, HIF-1)との相互作用の解析を通して敗血症から急性肺障害を経て肺線維症にまでいたる生体内機序を理解することが具体的な目標である。初期の実験計画に基づき今年度は以下の研究を行った。# 培養細胞を用いたin vitro実験の確立-細胞株を用いての実験系の確立に続いて今年度は,初代培養細胞(肺胞マクロファージ、腹腔マクロファージ(チオグルタレート刺激))を用いた実験系の確立を行った。昨年度の研究成果と合わせて,TXR1はHIF-1活性化を促進すること,HIF-1はTXNIPの発現を促進するが,TXNIPはTRX1の活性化を抑制するという関係が存在することが明らかになった。このことは細胞のレドックス環境が複数の分子の微妙なバランスの上に存在することを示唆する。今年度はさらに外因性物質で ある PAMPs と内因性物質である alarmins を含む DAMPs(damage-associated molecular patterns: 傷害関連分子パターン) を用いた検討を行いHIF-1の活性化を確認した。肺線維症の原因となり得るタバコ抽出液により肺胞,気管支上皮由来の細胞において活性酸素依存的にTRXの発現誘導とHIF-1の活性化をもたらすことを見いだした。# 動物モデル-昨年度は着手できなかった動物モデルを構築した。敗血症モデルと低酸素モデルをマウスを用いて構築してサンプルの採取に着手し酸素代謝に関わる分子とサイトカイン・ケモカインの発現を測定する実験系を確立した。また肺線維症の原因となり得るタバコ煙の吸引が肺において活性酸素依存的にHIF-1の活性化をもたらすことを見いだした。
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PLoS ONE
巻: 13 ページ: e0192796
10.1371/journal.pone.0192796