医用工学的手法であるDrug Delivery Systemを応用して、生体内分解材料を用いて長時間作用型鎮痛薬を作成し、安全かつ手技によらない強力な鎮痛方法を臨床応用できることを目的として研究を開始した。 10年来長時間作用型リドカイン徐放シートを作成しており、数日間放出し続ける徐放薬開発に成功し、動物実験からヒトボランティア試験を経て、実際の患者に投与する医師主導型臨床試験(術後痛に対するリドカイン徐放シートのⅠ/Ⅱ相臨床試験:UMINID000011945)で100症例の試験を終えたが、2018年度にその研究を論文化することができた。 最新の徐放手法を用いて、リドカイン徐放薬を注射可能な製剤化を目指す。リドカイン以外にもレボブピバカイン、ロピバカインについての作成も検討することを徐々にではあるが基礎研究として開始できている。徐放手法としては、新たな研究提携先に何度か訪問し、温度応答性の新たなポリマーを用いて放出を制御する試みに着手している。既にリドカインを用いての試験的な徐放薬は作成できており、それらをラットで作用時間を検討する実験を開始した。別にレボブピバカインの原末を製薬会社から提供していただき、レボブピバカインと新たな徐放手法での徐放薬作成にも着手している。 臨床研究法が変わり、作成した薬剤を人に用いるハードルは著しく上がったため、工学部や製薬会社などとも連携しつつ薬剤作成と研究成果を上げることを目標としている。ある程度の動物実験データが揃ったところで臨床研究として立案するに必要な製剤作成ラインについて検討を始める予定である。
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