本研究課題では、異なる種類の難治性疼痛動物モデルに対し、複数の疼痛抑制機構を組み合わせて作用させることにより臨床で未だに治療が困難な難治性疼痛の新しい治療法を開発することを目指して研究を行った。 動物モデルとしては、申請者は過去の研究で作成実績のある炎症惹起物質注入や足底切開による侵害受容性疼痛モデル、坐骨神経結紮による 神経障害性疼痛モデル、骨へのがん細胞注入による骨がん性疼痛モデルを用いる計画で、本研究期間では炎症性、足底切開、神経結紮モデルを作成した。一方、多角的治療としては、①脳神経由来成長因子(BDNF)の発現抑制による 疼痛抑制、②内因性疼痛抑制物質βエンドルフィンの過剰発現による疼痛抑制、③HCNチャネル機能抑制による疼痛抑制を計画し、本期間中には、①および②に関する領域の研究が主体となった。 具体的には、動物モデルを作成し行動評価にて妥当なモデルが完成されていることを確認するとともに、特に培養細胞においてはBDNFの発現をより効率的に抑制させるsiRNAを作成したこと、および エンドルフィンの効率的な発現方法の開発を目指した研究を行ったことが実績として挙げられる。平成28年度に報告した経過実績のあと、②に関して分泌型のβエンドルフィン産生細胞を作成するためにNGF遺伝子とのハイブリッド遺伝子を作成し培養細胞でELISAにて発現を確認した。さらに、βエンドルフィン産生アデノ随伴ウイルスの作成のためAAV2プラスミドへの入れ替えを行いβエンドルフィン遺伝子発現を確認した。検討項目として研究課題で掲げた組織学的検討、RNA、蛋白 レベルでの変化に関しては、主にRNAレベルで結果を得ている。治療への応用に関しては、動物への投与への検討は十分にできておらず、その原因として、発現が弱いこと、AAV自体の細胞障害性もしくはNGF共発現による影響が考えられた。
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