研究課題/領域番号 |
15K10566
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中本 賀寿夫 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30432636)
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研究分担者 |
徳山 尚吾 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70225358)
糟谷 史代 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (80131522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂肪酸受容体 / GPR40 / 疼痛 / 遊離脂肪酸 |
研究実績の概要 |
2016 年度の研究は、慢性疼痛時における GPR40/FFAR1 の発現様式、発現調節、さらに脂肪酸―GPR40/FFAR1 シグナル機構の機能的意義を明らかにするため、下記に示す 2 つの検討を行った。①痛みの慢性化機構における脳内脂肪酸-GPR40/FFAR1 シグナルの役割 GPR40/FFAR1 ノックアウトマウス (GPR40KO)およびワイルドタイプを用いて、Brennan らによって報告されている術後痛モデルマウスを作製した。ワイルドタイプマウスを用いて作製した術後痛モデルマウスは、術後1日目から機械的刺激に対する過敏反応が認められ、術後4 日目には回復していた。一方、GPR40KO は、ワイルドタイプと比較して術後 4 日目以降も機械的刺激に対して過敏を示し、この現象は 7 日間以上続き 14 日目には回復した。これらの結果は、GPR40KO によって内因性の疼痛制御機構の機能低下または破綻が生じていることが示唆された。②質量分析装置および質量顕微鏡法を用いた各種脂肪酸のイメージング解析 切開術後 2 日目のマウス視床下部及び中脳領域において、オレイン酸、パルミチン酸および DHA が sham 群と比較して増加した。しかしながら、延髄および前頭前皮質領域では何ら変化は認められなかった。一方、術後4日目の疼痛が回復した時点では、いずれの脳領域においても遊離脂肪酸含量の変化は認められなかった。これらの結果は、疼痛時に脳内の遊離脂肪酸の増加を介して GPR40/FFAR1 シグナルを活性化させている可能性が考えられる。さらに、このシグナルの活性化は痛みの抑制に関与していることが示唆された。以上の結果より、疼痛時の脳内では遊離脂肪酸の増加が生じている可能性が示された。この増加は、GPR40/FFAR1 を活性化させ痛みを抑制することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、疼痛時における脳内の遊離脂肪酸の局在変化を LC-MS/MS および質量顕微鏡を用いて解析を行う。 さらに、脂肪酸―GPR40/FFAR1 シグナルを介した神経伝達物質およびオピオイドペプチドの遊離機構ーβ-エンドルフィンを含有する初代培養系は、Yang らによって確立されている方法を用いる(Yang Z, et al., Brain Res. 1996.)。内基底視床下部を含む細胞培養系を用いて、GPR40/FFAR1 アゴニス添加後の β-エンドルフィン遊離機構について検討する。 共培養系またはスライス切片培養系を用いた脂肪酸―GPR40/FFAR1 シグナル機構を介した疼痛制御メカニズムの探索研究ー神経細胞およびアストロサイトの共培養系を用いて、アストロサイト由来の脂肪酸が神経細胞上に発現している GPR40/FFAR1 に作用し、その後どのようなシグナルを介して痛みを抑制するのかについて、検討を行う。さらに、GPR40/FFAR1 の下流シグナルについて検討を行うため、各種脂肪酸を添加させた後の細胞シグナルについても検討を行う。さらにビブラトームを用いて、冠状脳スライス切片を作製し、スライス切片培養下でも同様の検討を行う。
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