研究課題
2016年度までに私達は、長鎖脂肪酸受容体 GPR40/FFAR1 シグナルが内因性の疼痛制御機構の調節を担っていることを提唱してきた。また、これらアゴニストである遊離脂肪酸が、疼痛時の脳内、特に視床下部や中脳の領域において、無処置マウスと比較して有意に増加していることを見出している。これらの増加は、痛みが回復した段階では消失していることから、痛み刺激に応答して遊離が増強されていることが示唆される。しかし、どのような因子を介して遊離脂肪酸が増加するかについては解明されていない。そこで2017年度は、疼痛モデルマウスを用いて、疼痛時における脳内の遊離脂肪酸の挙動に変化を与える脂質関連因子の解析を行った。動物は、7 週齢の ddY 系雄性マウスを使用した。術後痛モデルは Brenann らの方法を用いて作製した。疼痛の評価には、von Frey 試験を用いた。各々の脳領域における遊離脂肪酸は、LC-MS/MS により解析した。脂質関連因子は、リアルタイム PCR 法により解析した。術後 2 日目の視床下部において、ドコサヘキサエン酸およびオレイン酸の増加が術後痛モデルマウスで認められた。アストロサイトに主に発現している脂肪酸結合蛋白質 FABP7 mRNA の発現は、コントロールマウスと比較して術後痛マウスで有意に低下した。一方、リン脂質を加水分解し遊離脂肪酸を産生する酵素のホスホリパーゼ A2 (PLA2) は、術後痛モデルマウスにおいて、iPLA2 mRNA の発現が有意に増加した。以上より、疼痛時における脳内の DHA を含む遊離脂肪酸の変化は、iPLA2 の発現増加および FABP7 mRNA の発現低下が関与していることが示唆された。これら脳内の遊離脂肪酸の変化は、GPR40/FFAR1 のシグナル機構を調節することで疼痛の制御を行っている可能性が示唆された。
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