研究課題/領域番号 |
15K10574
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
加藤 智幸 山形大学, 医学部, 講師 (40396560)
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研究分担者 |
武田 裕司 山形大学, 医学部, 助教 (90302299)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / MDSC / GPI-80 |
研究実績の概要 |
本年度は、第一の目的である『臨床検体における骨髄系細胞由来抑制性細胞(MDSCs)と関連するGPI-80発現変動の同定』を実施した。 まず、前骨髄系白血病細胞株であるHL60を用いて、サイトカイン刺激による好中球分化成熟誘導時におけるGPI-80発現について検討を行った。その結果、(1)好中球分化誘導によって細胞膜表面上のGPI-80発現の上昇が認められた。(2)G-CSF刺激によりGPI-80発現が上昇した。(3)GM-CSF刺激によりGPI-80発現が抑制された。以上の3点を明らかにできた。 次に、実際に進行性腎細胞癌患者から採取した末梢血中の白血球において、健常人と比較してGPI-80発現レベルに差異があるか否かについて検討を行った。その結果、(1)患者白血球中の好中球様分画においては、GPI-80発現の分散性(CV, coefficient of variation)が健常人に比べて有意に上昇していた。同様に、(2)患者白血球の単球様分画においてもGPI-80発現CV値が健常人に比べて有意に上昇していた。さらに、患者末梢血から分離精製したT細胞を、MDSCs候補細胞を添加して培養し、そのT細胞増殖の抑制効果について測定することで、MDSCs活性を測定した。その結果、(3)各分画におけるGPI-80発現CV値の上昇と、T細胞増殖抑制効果との間に有意な相関性が認められた。すなわち、進行性腎細胞癌患者の末梢血中白血球におけるGPI-80発現CV値の上昇がMDSCs活性の指標となりうると考えられた。 以上より、進行性腎細胞癌患者の末梢血中白血球におけるGPI-80発現を測定することにより、容易にMDSCsを検出できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の1番目である『臨床検体における骨髄系細胞由来抑制性細胞(MDSCs)と関連するGPI-80発現変動の同定』が、完遂できた。現在、ここまでの結果を学会発表し、MDSCs活性との相関性を確認した結果を含めて、学術雑誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
計画の2番目となる『MDSCs候補細胞の発現遺伝子の網羅的解析』を実施する予定である。現在、試験管内にて分化誘導するHL60細胞を用いたシステムを用いて、GPI-80発現上昇と抑制時の、発現遺伝子の網羅的解析を準備中である。これにより、臨床検体にて検討すべき遺伝子候補を明確にする予定である。そして、解析可能なRNA回収ができた臨床検体を用いて、GPI-80発現パターンとの関連性を検討することで、第2番目の目的を実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において最も費用を必要とするのがRNA-seqの測定である。本年度は、RNA-seqの測定をひかえたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、解析可能なRNA回収ができた検体についてRNA-seqを実施する予定であるため、十分な費用が必要となる。十分な予備検討を実施後に、RNA-seqの費用に充てる予定である。
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