研究課題
前年度までに、『臨床検体における骨髄球系細胞由来抑制性細胞(MDSCs)と関連するGPI-80発現変動の同定』および『MDSCs候補細胞の発現遺伝子の網羅的解析』を実施し、健常者と転移性腎細胞癌患者において末梢血白血球におけるGPI-80 mRNA発現量とその変動に有意な差があることを報告した。本年度は上記結果を受けて、『転移性腎細胞癌患者末梢血中GPI-80発現パターンと予後との関連』について検討を行った。サンプル数をmRCC患者20例および健康ボランティア16例に増やして末梢血好中球および単球の骨髄系細胞抗原をフローサイトメトリーで測定した。また、転移性腎細胞癌患者20例における免疫関連臨床データ(好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値、CRP)および今回の末梢血骨髄系抗原およびエフェクター分子の発現レベル(蛍光強度の平均、MFI)および偏差(係数変動、CV)と全生存期間の関連について検討した。その結果、転移性腎細胞癌患者を末梢血中単球系細胞GPI-80MFIの中央値1625で分けた場合、全生存期間中央値は1625以上の患者群(n=10)では594日であるのに対し、1625未満の患者群(n=10)では中央値に達しておらず、有意に予後良好であった(p=0.0169)。また、上記因子の全生存期間に対する多変量解析を行ったところ、骨髄球系GPI-80CVおよび単球系GPI-80MFIが転移性腎細胞癌患者の全生存期間に独立して有意な影響を及ぼす危険因子であることが明らかとなった。以上の結果から、転移性腎細胞癌患者の末梢血中GPI-80発現パターンはMDSCsのマーカーとして有用であるのみならず、転移性腎細胞癌患者の全生存期間の予後因子として有用であると考えられた。さらに、今後の検討により末梢血中GPI-80発現細胞は腎細胞癌薬物治療の標的となり得ることが示唆された。
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