研究実績の概要 |
我々は先行研究で生検標本のアンドロゲン・エストロゲンシグナルおよびstem cell-like cellの発現を検討し、進行性前立腺癌の予後判定に分子診断が有用であることを示した(Clin Cancer Res, 2014)。本研究は、分子診断を行い、前立腺癌の治療反応性や予後を予測し、今後の治療個別化を推進することである。今年度は多施設からの標本の採取、手続きが難航しているため、自施設での未解析の前立腺癌集団を用いて前立腺癌の分子診断および前立腺全摘除標本における新たな治療標的因子の解析を行い、①Increased expression of tripartite motif (TRIM) 47 is a negative prognostic predictor in human prostate cancer. Clin Genitourinary Cancer, 20168および②Toremifene, a selective estrogen receptor modulator, significantly improved biochemical recurrence in bone metastatic prostate cancer: a randomized controlled phase IIA trial. BMC Cancer, 15:836.の2編に論文発表した。①はユビキチン化に関与するTRIM (tripartite motif)ファミリーのうちTRIM47の前立腺癌での発現を検討した。レーザーマイクロダイセクション法にてTRIM47mRNAの発現と、独自のTRIM47抗体を作成し免疫組織染色法にてTRIM47のタンパク発現を検討した。TRIM47は前立腺癌に多く発現し、予後不良因子となっていた。②は骨転移を有する新規前立腺癌に対するアンドロゲン遮断療法にトレミフェンまたはラロキシフェンを上乗せする前向き無作為化3群比較探索試験の解析である。生検標本にてアンドロゲン受容体、エストロゲン受容体α、エストロゲン受容体βの発現と治療効果との相関もLabeling indexを用いて検討した。対照群のアンドロゲン遮断療法単独群と比較してアンドロゲン遮断療法+トレミフェン群では有意に(P=0.04)PSA非再発率が良好であり、Labeling indexと治療効果との相関は認めなかった。
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