研究実績の概要 |
前立腺癌の治療予後を予測する臨床病理学的因子として血清PSA値、生検でのGleason score (GS)、画像診断によるT, N, M stageがある。先行研究ではパラフィン固定された生検標本からRNAを抽出し、アンドロゲン・エストロゲンシグナルおよびstem cell-like cellの発現を検討し、進行性前立腺癌の予後判定に分子診断が有用であることを示した(Clin Cancer Res, 2014)。 本研究の目的は、分子診断を利用して前立腺癌の治療反応性や予後を予測し、今後の治療個別化を推進することである。 今年度は共同研究者と共に前立腺癌でのlong non-coding RNA (lncRNA)における発現、機能解析を行い、①Misawa A, et al. Androgen-induced lncRNA POTEF-AS1 regulates apoptosis related pathway to facilitate cell survival in prostate cancer cells. Cancer Science 2016 Dec 29. doi: 10.1111/cas.13151.に論文発表した。 我々はこれまで前立腺癌においてアンドロゲンに応答するlncRNAおよびmicro RNA (miRNA)を介したエピゲノム制御機構を報告してきた(Takayama K, et al. EMBO J 32, 1665; 2013, Nat Commun 6, 8219; 2015)。本研究ではLNCaP、VCaPでアンドロゲン応答性を有するlncRNAであるPOTEFを同定した。POTEF-AS (anti sense)1はPOTEF遺伝子のアンチセンス領域にアンドロゲン依存的に発現が上昇しPOTEFを負に制御する。臨床検体でもPOTEF-AS1は発現が上昇していた。POTEF-AS1はToll-like 受容体関連シグナルを抑制して腫瘍増殖に寄与していた。
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