研究実績の概要 |
尿路上皮癌の腫瘍内免疫応答を網羅的に解析するために次世代シーケンサーを用いたRNA-Seqを実施した。TURBT3例、膀胱全摘12例の15検体からRNAを抽出し、CIBERSORT(Newman, AM. et al. Nature methods 2015: 12,453)に従い、遺伝子発現をもとに腫瘍内浸潤免疫細胞の組成を解析した。TUR群に比して全摘群でCIBERSORTスコアが高く、腫瘍内への炎症細胞浸潤の増加が示唆された。腫瘍内の細胞浸潤のマーカーとしてCD4、CD8、FOXP3、TCR γ constant region, TCR δ constant regionの発現、抗原提示分子B2M、抗原特異的免疫応答のマーカーとしてIFNG、制御分子としてPD-1、PD-L1に注目した。γδT細胞は、TCRに加えてNKG2D受容体を用いて癌細胞を認識することから、膀胱癌におけるNKG2Dリガンド(MICA、MICB、ULBP1、RAET1E、RAET1G、ULBP2、RAET1L、ULBP3)の発現を検討した。クラスター解析を行ったところ、CD4及びCD8発現が高い群(Hot)とそうでない(Cold)群の2群に分かれた。PD-1/ PD-L1、B2M、IFNGの発現もHot群で認められた。γδT細胞に関連するNKG2Dリガンドのうち、RAET1LのみHot群で発現が高く、MICA、MICB、ULBP1の発現は、HotとColdのいずれにも認め、RAET1E、RAET1G、ULBP2、ULBP3はCold群に高発現の腫瘍を認めた。これらの分子を標的とするγδT細胞治療は、Cold群の腫瘍細胞を認識して腫瘍内免疫応答を惹起する可能性が期待され、免疫チェックポイント阻害剤無効例の対策として、また免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による治療効果増強が期待される。
|