研究実績の概要 |
本研究は、スフェロイド(first selection)に腫瘍周囲環境が加わった新組織切片培養(second selection)において,KIF22, Plk2を含む発現上昇遺伝子群が抽出され,これら遺伝子の機能的解析及び診断・治療への応用展開を図った。具体的には,(1)前立腺癌細胞におけるKIF22遺伝子の病理組織学的,機能的解析,(2)抗癌剤とsiRNAの組み合わせで,抗癌剤抵抗性の検討,(3)異種間の相互作用(ヒト前立腺がん細胞株-ラット各臓器組織片)と同種間のモデルの構築を目指す同方法の標準化を図るなどを目的とした。KIF22遺伝子の機能解析は、siRNAを用いて前立腺癌細胞株(DU145, LNCaP)培養系で行った。その結果、いずれの細胞株においても、細胞成長は抑制された。さらに、細胞周期およびアポトーシスについて解析した結果、いずれの細胞株においても、G2/M期に停止し、集積が起こり、またアポトーシスも増加することが認められた。一方、細胞の遊走能や浸潤能には影響を与えなかった。KIF22遺伝子が属するkinesin superfamilyは微小管に結合するモーターたんぱく質であり、癌との関係についての報告は1報のみである。少なくとも前立腺癌細胞株においては、細胞周期およびアポトーシスに関与することが明らかにできた。最終年度において、KIF22遺伝子発現を抑制させるためにsiRNAを処理し、抗癌剤(ドセタキセル)の効果については、併用による抗がん剤の効果増強を確認することができた。これらの結果により、KIF22遺伝子の前立腺癌への関与および治療への応用の可能性を示すことが出来た。加えて、組織雪片上でのスフェロイド培養においては、立体構造を保ちつつ、培養できることが確認できた。
|