研究課題/領域番号 |
15K10583
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
有馬 公伸 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10175995)
|
研究分担者 |
佐々木 豪 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (20644941) [辞退]
白石 泰三 三重大学, 医学系研究科, 客員教授 (30162762)
石井 健一朗 三重大学, 医学系研究科, 助教 (90397513)
加藤 学 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (60626117)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 前立腺 / 疾患関連リプログラミング / 線維芽細胞の多様性 / 前立腺癌患者由来線維芽細胞 / 前立腺幹・前駆細胞 / in vitro共培養実験 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き本年度も、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られた線維芽細胞とヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1細胞とのin vitro共培養実験を施行した。前立腺癌組織からの線維芽細胞の初代培養は継続して行っており、昨年度に使用した線維芽細胞とは異なる6つの線維芽細胞を追加検討した。Falconセルカルチャーインサートを用いたin vitro共培養実験では、BPH-1細胞に対してpcPrF-M10, pcPrF-M11, pcPrF-M18, pcPrF-M23, pcPrF-M24, pcPrF-M26それぞれを組み合わせて4日間の共培養を行った後に、BPH-1細胞の細胞増殖率、分泌タンパク質量の変化を比較検討した。その結果、pcPrF-M11およびpcPrF-M18はBPH-1細胞の増殖率を有意に促進させた。BPH-1細胞からのIL-6産生量は全ての共培養群で有意に増加した。その中でもpcPrF-M11と共培養したBPH-1細胞からのIL-6産生量はBPH-1細胞単独群に比較して15倍以上に増加した。癌抑制遺伝子TP53 mRNA発現量は、PrSCおよびpcPrF-M7との共培養群で有意に減少した。一方、pcPrF-M11およびpcPrF-M24との共培養群でTP53 mRNA発現量は有意に増加した。癌抑制遺伝子PTEN mRNA発現量は、pcPrF-M7との共培養群でのみ有意に減少した。一方、pcPrF-M18, pcPrF-M24, pcPrF-M26との共培養群でPTEN mRNA発現量は有意に増加した。 以上の結果より、癌患者由来線維芽細胞が産生・分泌するパラクライン因子には、BPH-1細胞の増殖を促進する細胞増殖因子やサイトカインとは別に、癌抑制遺伝子の発現変化のようなBPH-1細胞の分化状態に関与する何らかの因子が存在している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、本年度も順調に前立腺癌組織からの線維芽細胞の初代培養を継続し、独自のCAFsパネルで使用可能な線維芽細胞が10種類を超えた。これら複数の線維芽細胞との共培養によりBPH-1細胞がどのような挙動を示すのか、細胞増殖への影響、サイトカイン産生量への影響、そして癌抑制遺伝子の発現への影響を予定通り検討することができた。癌抑制遺伝子の発現に影響した線維芽細胞とBPH-1細胞の組み合わせについてBPH-1細胞からDNAを抽出し、現在、TP53およびPTEN遺伝子のDNAメチル化解析を施行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで我々は線維芽細胞が産生・分泌する細胞増殖因子やサイトカインの働きを研究し、それらを治療標的とした新規薬剤の開発などを考えてきた。しかし、本年度の実験結果では細胞増殖に関わる線維芽細胞由来因子とは別に、癌抑制遺伝子の発現変化のような成熟上皮細胞の分化状態に関与する何らかの線維芽細胞由来因子が存在している可能性を見出した。一般に、上皮細胞を成熟させる因子として形態形成因子morphogenの働きが考えているが、癌細胞との相互作用に関わる癌関連線維芽細胞がmorphogenを産生・分泌しているという報告はない。最終年度となる次年度は、癌関連線維芽細胞が産生・分泌するmorphogenもしくは類似作用を示す因子の探索を試みる予定である。
|