高感度質量分析法を用いた尿ペプチドミクスによる前立腺癌の新規標的分子の探索

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K10587
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 井上 貴博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80511881)
• 研究分担者: 松井 喜之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00582107) [辞退] ; 岡田 能幸 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60739291) [辞退] ; 小川 修 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90260611)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 前立腺がん / 質量分析 / PSA

研究実績の概要

1)PSAを産生するヒト前立腺癌細胞株LNCaP、VCaP、LAPC4や当科で樹立したPSAを産生しているヒトxenograftモデルKUCaP-2/KUCaP-3(Terada, Inoue et al. Cancer Res 2010)がPSA C末断片m/z2332を発現しているかどうかを細胞溶解液や細胞培養上清で検討を行った。PSA C末断片m/z2332特異的抗体を用いたDot Blot法やMALDI-TOF/MS法での検出を試みた結果、KUCaP-2およびKUCaP-3の細胞溶解液にのみDot Blot法で検出された。従って、既存の前立腺がん細胞株ではPSA C末断片m/z2332の発現は確認できなかったが、xenograftモデルではその発現が認められた。
2)前立腺マッサージ後尿中にMALDI-TOF/MS法でPSA C末断片m/z2332を検出し得た症例の前立腺全摘組織からPSA C末断片m/z2332特異的抗体を用いたDot Blot法でPSA C末断片m/z2332を検出できた。従って、前立腺組織でPSA C末断片m/z2332が発現していることが強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の通りの結果が得られている。

今後の研究の推進方策

前立腺マッサージ後尿（前立腺がん5例、前立腺肥大症5例）からDifferential Solubilization法で抽出したタンパク質・ペプチドを二次元電気泳動法にて網羅的な解析を行ったところ前立腺がん患者のみに見られるスポットを検出した。現在、多重アミン特異的同位体(iTRAQ)試薬を用いた網羅的な相対解析にてより前立腺がん特異的なペプチド・タンパク質の同定を試みている。
また、現在PSA C末断片 m/z2332に対する特異的な抗体を用いた臨床応用可能な検出系の開発を企業と行っており、多検体を用いた同断片の有用性の検討を行う準備をしている。また前立腺全摘標本から作製したtissue microarrayを作成済みでこれを用いた免疫染色による発現検討も行う予定である。

研究成果

• [学会発表] 前立腺マッサージ後の尿中PSA濃度の検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 宮崎有、中山憲司、井上貴博、牧野雄樹 、植垣正幸、後藤崇之、岡田能幸、小林恭、寺田直樹、山崎俊成、松井喜之、神波大己、小川修
  • 学会等名: 第74回日本癌学会学術総会、2015年10月8日、名古屋
  • 発表場所: 名古屋
  • 年月日: 2015-10-08 – 2015-10-10
• [学会発表] Discovery of Urinary Biomarker Candidates for Prostate Cancer Based On Proteomic analyses (2015)
  • 著者名/発表者名: Yu Miyazaki, Kenji Nakayama, Sadanori Sekiya, Takahiro Inoue, Takayuki Goto, Naoki Terada, Yuki Makino, Masayuki Uegaki, Yoshiyuki Okada, Takashi Kobayashi, Shigeki Kajihara, Shin-ichiro Kawabata, Shinichi Iwamoto, Tomomi Kamba, Koichi Tanaka and Osamu Ogawa
  • 学会等名: 13th Urological Association of Asia Congress 2015
  • 発表場所: Shanghai, China
  • 年月日: 2015-09-03 – 2015-09-06
• [学会発表] 前立腺マッサージ後の尿中PSA濃度の検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 宮﨑有、井上貴博、牧野雄樹、植垣正幸、後藤崇之、吉川武志、岡田能幸、小林恭、寺田直樹、山崎俊成、松井喜之、神波大己、小川修
  • 学会等名: 第103回日本泌尿器科学会総会
  • 発表場所: 金沢
  • 年月日: 2015-04-18 – 2015-04-21
• [備考] 京都大学医学研究科泌尿器科学教室（研究の概要―基礎的な研究―1)前立腺癌研究）
  • URL: http://www.urology.kuhp.kyoto-u.ac.jp/medic/research/overview/overview.html#1