研究課題
①去勢抵抗性前立腺癌のヒト臨床検体におけるガレクチン-3発現の検討去勢抵抗性前立腺癌症例で手術摘出された骨転移巣3例・局所浸潤巣2例・リンパ節転移巣1例を用いて免疫染色解析を行いガレクチン-3発現の検討を行った。骨転移巣1例、リンパ節転移巣1例でガレクチン-3の発現を認めた。また前立腺全摘組織を用いて原発巣のガレクチン-3発現を調べたところ、癌細胞での発現を認める症例と認めない症例があることがわかった。また前立腺全摘症例と去勢抵抗性前立腺癌症例の血清中のガレクチン-3濃度を測定したところ、去勢抵抗性前立腺癌症例群に置いて有意に高値であることがわかった。現在、前立腺全摘症例を用いてGleason scoreやPSA再発への関与を検討している。②前立腺癌細胞株におけるガレクチン-3の機能解析ホルモン感受性前立腺癌細胞株(LNCaP)にガレクチン-3を強発現させた細胞株において増殖能、遊走能、浸潤能を検討した。ガレクチン-3強発現群に置いて増殖能亢進、遊走能亢進と浸潤能亢進を認めた。ホルモン非感受性前立腺癌細胞株(PC-3)にsiRNAを使用してガレクチン-3をノックダウンしたした細胞株では増殖能抑制、遊走能抑制と浸潤能抑制を認めた。これらの結果を基に現在論文作成中である。③アンドロゲンレセプターに対するガレクチン-3の関与我々はガレクチン-3を強発現させたLNCaP細胞で、LNCaP細胞と比較して、DHT刺激依存性にPSAの発現が有意に亢進することを見出した。この機序にはガレクチン-3がPSA転写活性に関与していることが考えられたため、ルシフェラーゼアッセイを用いてPSAの転写活性におけるガレクチン-3の影響を検討した。その結果PSA転写活性はガレクチン-3強発現群において有意に増強していた。さらにガレクチン-3強発現LNCaPを使い、免疫沈降法でアンドロゲンレセプターとの結合の有無を検討したが結合は認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、①ガレクチン-3が去勢抵抗性前立腺癌の臨床検体で発現しており血清値では有意に高値であること、②LNCaP細胞およびPC-3細胞において、ガレクチン-3は増殖能、浸潤能および遊走能を有意に促進させること、③ガレクチン-3がPSA転写活性の亢進に関連していることから今後、in vitroやマウス皮下移植モデルを用いたホルモン療法、放射線療法、化学療法に対するガレクチン-3の影響と作用機序の解析を行う準備は順調であると考えられる。
In vitroでの検討ではガレクチン-3発現細胞に対して抗アンドロゲン剤(ビカルタミド、エンザルタミド)、抗がん剤(シスプラチン、ジェムシタビン、ドセタキセル、カバジタキセル)や放射線療法を行い増殖能検討やPSA発現検討を行う。さらにガレクチン-3発現細胞の有無による比較をマウス皮下移植モデルにおいても検討する。腫瘍を摘出し、血管新生因子、アポトーシス関連因子を分子生物学的に解析すると共にマイクロアレイによる遺伝子プロファイルの違いも検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件)
International Journal of Urology
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