本研究は、悪性度が高く、薬物療法による治療が困難とされる肉腫様腎癌(s-RCC)について、その悪性度と関連する特異的分子の同定とその悪性度に関与する機能の解明を目的とした。 最初に、s-RCCの実験系を確立するために、s-RCC類似細胞株の樹立を行った。Fe-NTA誘発ラット腎癌から安定した細胞株(RKFe細胞)を樹立した。臨床検体として使用可能なヒトs-RCC組織とRKFe細胞に同様に高発現している癌関連分子の検索、同定を分子生物学的あるいは遺伝子工学的手法を用いて行った。上記の特異的な分子を同定し、それらの癌の進展に関与するメカニズムに関する解明を行った。それら特異的分子が癌の進展に関して、増殖、アポトーシス、浸潤、遊走、接着のどのメカニズムに関与するのかを各種アッセイ法を用いて解明した。またRKFe細胞とACHNや786-Oといったそのほかの腎癌細胞株における発現分子の違いおよび癌の進展に関与するメカニズムの違いについて、分子生物学的手法および免疫組織学的手法を用いて解明に努めた。 腎癌の進展に免疫機構の特異性が考えられている。s-RCCにおいても免疫系の関与するメカニズムの解明が必要であると考え、ヒトs-RCC組織を用いて、CD57陽性細胞、CD68陽性細胞、肥満細胞といった免疫関連細胞のs-RCCへの臨床的意義について検討した。s-RCCにおける肥満細胞の発現は、血管新生を介した癌の進展に関与している可能性が示唆されることが判明した。今後さらにRKFe細胞を用いた免疫応答細胞との関与およびクロストークの可能性とそこに関与する分子の同定を検討する予定である。 s-RCCの癌の進展に関与する分子とそのメカニズムの同定について、国際学会等で発表を行い、情報提供と情報発信を行った。今後は科学雑誌における論文化を目指し、さらなる情報発信に努めたい。
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