研究課題/領域番号 |
15K10596
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
河野 吉昭 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (30593793)
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研究分担者 |
江藤 正俊 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90315078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / Wntシグナル / β-catenin / 細胞増殖 / 抗アポトーシス |
研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)におけるWntシグナルの異常活性化は重要な細胞内イベントであると考えられ、同シグナルのkey mediatorでありCRPCで実際に異常貯留しているβ-cateninを標的とすることで、CRPCに対する新たな治療戦略が構築できることが期待される。β-cateninはTCF/LEFを始めとする転写因子を活性化させるため、ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株PC-3及びDU145に対するsiRNAによるβ-cateninノックダウンを行い、DNAマイクロアレイ解析(Agilent社 SurePrint G3 Human GE Microarray 8x60K v3.)を施行、β-cateninノックダウンにより発現低下する遺伝子に注目した。この解析によって、①細胞増殖・細胞周期、②抗アポトーシス・薬剤耐性などを制御する遺伝子群の発現低下を認めた。またヒト前立腺癌細胞株であるLNCaP由来のTR-βi細胞を使用し、ドキシサイクリン処理下(β-catenin ノックダウン)と無処理(ノックダウン無し)サンプルより抽出したmRNAを用いて、同様にアレイ解析を行い、同様の遺伝子発現低下を認めた。この中で、細胞周期と抗アポトーシスの双方を制御する分子Aに着目し、そのsiRNAノックダウンを行なったところ、β-catenin ノックダウンと同様に上記前立腺癌細胞株の増殖を著明に抑制することを既に見出した。さらに、これらのノックダウン処理は、ドセタキセルによる前立腺癌細胞株の殺細胞効果を増強させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌細胞株を用いたDNAマイクロアレイ解析により①細胞増殖・細胞周期、②抗アポトーシス・薬剤耐性などを制御する遺伝子群の発現低下を認めており、これらが前立腺癌細胞におけるβ-catenin の標的遺伝子である可能性が示唆された。これは今まで論文等で報告されていない新しい知見を含んでいる。さらに、その中の分子Aについては、前立腺癌細胞における生物学的役割の一端を明らかに出来ており、本研究課題は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記分子Aの前立腺癌細胞における細胞増殖・細胞周期・抗アポトーシス・薬剤耐性の制御機序について、詳細な分子メカニズムを解析していく。またβ-cateninノックダウンによって発現低下を認めた他の分子についても、分子Aと同様に解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ解析の外注や試薬購入が当初の予定よりも低コストで可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
導入効率の高いトランスフェクション用試薬や各種実験系に必要な抗体の購入に使用する予定である。
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