研究課題
1.786-O細胞を用いて、腎細胞癌の骨転移マウスモデルを作製した。骨転移巣から採取した組織中のmRNAおよび蛋白を抽出し、real-time PCRで目的分子のmRNAの発現を、また免疫染色と免疫ブロットで蛋白の発現状況を確認した。その結果、骨転移巣で有意にタイプ2の膜結合型セリンプロテアーゼであるマトリプテースとHGFの発現増強がみられ、その制御因子であるHAI-2(hepatocyte growth factor activator type 2)の発現が低下していた。この現象は抽出蛋白を用いた免疫ブロットでも確認された。組織の免疫染色では骨転移組織に発現するMETのリン酸化が亢進している傾向がみられた。また親株に発現していないにもかかわらず、骨転移巣ではマトリプテース高発現していた。また比較対象として腎被膜下に移植した病巣ではマトリプテースの発現はほとんど見られず、METのリン酸化も亢進していなかった。2.786-O細胞に、レンチウィルスベクターを導入し、ドキシサイクリンで発現調節が可能なHAI-2の恒常的ノックダウン、およびHAI-2の恒常的強制発現株の2種類を作製した。3.恒常的HAI-2ノックダウン786-O細胞を用いたマトリジェル浸潤アッセイで、癌細胞の浸潤能がpro-HGF依存性に有意に亢進していた。さらに遊走能も亢進していた。要因として、マトリプテースの酵素活性によるpro-HGFの活性化亢進が寄与している可能性が考えられた。4.786-O細胞において、HAI-2ノックダウンによりマトリプテースの発現が亢進する(逆相関)現象を確認した。腎癌の骨転移巣では、リガンド依存性のMETリン酸化の亢進が、癌の進展に促進的に作用している可能性が高いと考えられた。
すべて 2018 2017
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)