研究課題/領域番号 |
15K10604
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中西 弘之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (40398376)
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研究分担者 |
浮村 理 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70275220)
芦原 英司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70275197)
中村 晃和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10381964)
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (50601598)
三木 恒治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (10243239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | γδT細胞 / MICA/B / 正所性膀胱癌モデル / 膀胱注入療法 / 複合免疫療法 |
研究実績の概要 |
共同研究者である芦原らは、正所性膀胱癌マウスモデルを用いて、γδT 細胞の膀胱内 注入療法の有効性、およびBCG 注入療法が有効性を示さないMHC クラスI の欠失した膀胱癌細胞に対しても、γδT 細胞が抗腫瘍効果を示すことを報告した。(T Yuasa, E Ashihara., et al. Cancer Immunol Immunother. 58:493-502.2009) γδT細胞の抗腫瘍効果が骨髄腫の細胞株において骨髄腫細胞株のICAM-1の発現強度に比例して抗腫瘍効果が増強されることや、ICAM-1の対する中和抗体を投与すると抗腫瘍効果が減弱し、さらに骨髄腫細胞株にICAM-1 cDNAを発現させることにより増強することを確認し、ICAM-1発現の有無がγδT細胞の骨髄腫に対する治療効果予測因子となりうることを報告した。(Uchida, R. Ashihara, E., et al. Biochem Biophys Res Commun 352:635-641:2007) また、骨髄腫の細胞株において、ZOLにより前処置を行った細胞株から、細胞外にIPPが周囲に放出されること、およびIPPがγδT細胞の癌細胞に対する遊走因子であることをμチャンバーの実験系で報告した。( Ashihara, E, et al. Biochem Biophys Res Commun 463:660-665:2015) γδT細胞の全身療法は、臨床治験が行われているが、全身投与では十分な免疫細胞を治療目的部位へ到達させる事が困難であることや大量投与に伴う副作用のため、その治療効果には限界がある。γδT 細胞膀胱内注入療法は、膀胱という閉鎖空間に投与する独創的な細胞療法であり、Effecter 細胞濃度を維持したままtarget に到達できることからも、高い直接効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、膀胱癌の臨床検体、およびSCIDマウスに移植した膀胱癌を用いて、CAF(cancer associated fibroblast)の分離、初代培養を繰り返し行い、分離抽出して得られたCAFを、癌細胞とγδT細胞との共培養時に添加することで、抗腫瘍効果の変化を検証し、そこから癌微小環境に影響する因子を特定する予定であったが、得られたCAFの増殖能力が芳しくないため、現在培養条件を調整中である。現在までの実績として、in vitroおよびin vivoの実験において、γδT細胞の抗腫瘍効果を検証できる評価アッセイを確立し、適切に培養されたγδT細胞が、膀胱癌細胞株に対して強力な抗腫瘍効果を発揮することを確認した。具体的な実験方法は以下である。まず、健常人末梢血由来の単核球採取、ZOLとヒト組み換え型IL2を刺激抗原としてγδT細胞培養を行う。分化誘導の確認はフローサイトメトリー (以下FCM) 法で確認した。11日間の培養で最大で約800倍の増幅が可能であった。抗腫瘍効果を評価するアッセイにもFCM法で取り組み、E:T(Effector:Target)比やZOLの癌細胞への前処置の有無に相関する形で複数の膀胱癌細胞株において著明な抗腫瘍効果を発揮することが確認できた。確立した抗腫瘍効果の評価方法であるが、癌細胞をCFSE で染色し、γδT細胞との4時間共培養後にPIにて染色し、CFSE+/PI+分画を死細胞分画として評価行った。Vivoの実験では、5-6週齢雌SCIDマウスを用いて、膀胱内にルシフェラーゼ遺伝子を導入した膀胱癌細胞株を尿道より移植、正着させて正所性膀胱癌モデルを作製した。作製したモデルマウスに対して週1回合計4回のγδT細胞の経尿道投与を行い、癌細胞の縮小の治療効果判定にはIVISを使用した。週1回、経時的に4週間目まで評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
CAFの培養条件の検討がうまくすすまなかったため、実験計画の推進方法を変更することとした。当初の計画である癌微小環境の解析の進展が望めなかった場合、もう一つのテーマとして考えていたγδT細胞と抗癌剤を併用した複合型免疫療法の開発およびそのメカニズム解明の検討を行った。 γδT細胞の単独の免疫療法のみでは、既報によると治療効果に限界があるとされており、既存の膀胱癌に対する標準治療薬(CDDP,GEM,MTX,VBL,ADR,MMCなど)を併用した複合免疫療法に着目した。まず、抗癌剤の暴露濃度、暴露時間を癌細胞に対して致死量とはならず、癌細胞表面のタンパク、接着因子に変化を与えるとされる、免疫誘導致死濃度をWST8アッセイにより検討した。決定した濃度、暴露時間で、癌細胞株をZOLと同時に前処置を行い、γδT細胞による抗腫瘍効果が増強される抗癌剤を探索し、その中でゲムシタビンが候補薬剤として上ったため以下の実験ではゲムシタビンに焦点を絞った。 抗癌剤で暴露されていない細胞株と暴露された細胞株において細胞に腫瘍抗原としてupregulationされた抗原(PDL-1,DNAM-1,MICA,MICB,ICAM-1,Fas、等)を各接着因子に対する抗体でFCMにより確認を行い、その中で、ゲムシタビン処置でMICA/Bにおいて有意に差が出た。MICA/Bをピックアップし、同分子をsiRNAによりノックダウンし、その際の抗腫瘍効果の変化を検証したところ、ゲムシタビン処置施した膀胱癌細胞株に対するγδT細胞による抗腫瘍効果が減弱することが発見された。今後は、正所性膀胱癌モデルにおけるin vivoの実験において、ゲムシタビンの前処置がγδT細胞による抗腫瘍効果に相乗効果をもたらすかを引き続き解析を継続していく予定である。
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