研究課題
筋層浸潤癌、非筋層浸潤癌ならびに上皮内癌の3つのタイプの膀胱癌症例の臨床病理学的データおよび組織・血液・尿検体の採取を行い、上皮内癌の局所再発・進展と治療抵抗性に関連する分子を明らかにし、予後を予測するバイオマーカーの探索を行った。癌微小環境あるいはtumor buddingの視点から、ケモカイン、サイトカイン、血管新生因子、上皮間葉転換関連因子など幅広く癌の発育進展にかかわる分子を解析した。また、膀胱局所治療による免疫細胞の誘導とサイトカイン分泌の変化についても解析し、宿主免疫と癌の発育進展の関係についても検討した。BCG膀胱内注入(膀注)療法の抵抗性因子としてtight junctionマーカーであるclaudin (CLDN) 1とCLDN 4、間葉系マーカーのvimentin、さらに癌幹細胞マーカーのOCT3/4の発現を評価し、OCT3/4発現がBCG膀注療法抵抗性に関与することを確認した。また、Multiplex urinary immunoassayにより、尿中のIL8、MMP9、MMP10、angiogeninA、APOE、SDC1、A1AT、PAⅡ、CA9、VEGFのバイオマーカーパネルが有用であることを確認した。さらに、癌微小環境においてCXCL1シグナルが局所再発、進展、あるいは薬剤耐性に関与していること、腫瘍が産生するコラーゲンタイプⅣα1とコラーゲンタイプⅩⅢα1が腫瘍の浸潤ポイントにおいてtumor buddingを誘導することを確認した。最後に、BCG膀注療法では組織内でCD4、CD8、CD56 、血液・尿中でIL1A、ILl2、IL17Aが誘導されるが、抗癌剤マイトマイシンではCD56、CD204、Foxp3が抑制され、IL4、IL17Aを誘導するなど、薬剤により誘導する免疫細胞とサイトカインが異なることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
1) 膀胱癌211症例を対象にmultiplex urinary immunoassayにより、尿中IL8、MMP9、MMP10、angiogeninA、APOE、SDC1、A1AT、PAⅡ、CA9、VEGFをELISA法で測定し、high grade CISをはじめ筋層浸潤癌で発現亢進し、10個のバイオマーカーパネルの感度が85%、特異度は81%、AUCが0.982(95% CI:0.85-0.934)で、膀胱癌検出に本パネルが有用であることを明らかにした。(論文公表)。2) 155例の筋層非浸潤性膀胱癌における腫瘍関連マクロファージ(TAM)と腫瘍関連線維芽細胞(TAF)の癌微小環境としての意義を明らかにした。CXCL1、CD204(TAMマーカー)、αSMA(CAFマーカー)、E-cadherin、MMP2を免疫染色し、CXCL1の発現がTAMとTAFのリクルートに関連し、腫瘍の増殖と播種を促進することを明らかにした。癌微小環境におけるCXCL1シグナルは再発、進展、さらに薬剤耐性に関与していた(論文公表)。3) 膀胱腫瘍が産生するコラーゲンタイプⅣα1とコラーゲンタイプⅩⅢα1が、腫瘍の浸潤ポイントにおいてtumor buddingを誘導することを確認した(論文公表)。4) BCGおよび各種抗癌剤の膀注療法により惹起される免疫細胞誘導とサイトカイン誘導について検討した。BCG膀注療法ではCD4、CD8、CD56が誘導されるが、CD204、制御性 T cell、PD-L1は抑制されず治療抵抗性に関連し、抗癌剤のマイトマイシンではCD56、CD204、Foxp3は抑制された。サイトカインでは、BCGはIL1A、ILl2、IL17Aを誘導し、マイトマイシンはIL4、IL17Aを誘導するなど、薬剤により誘導する免疫応答が異なることを確認した(論文公表)。
新規の上皮内癌検体の収集は難しいこともあり、今後も対象症例を逐次集積しながら、網羅的解析を継続する。メチル化PCRアレイはそのひとつで有り、次年度は研究総括のために必要な追加実験と解析データーの論文公表をさらに進める。
若干の研究消耗品の余剰が生じたため。
次年度に上記余剰分を使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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