研究課題
樹状細胞によるDNAJB8を標的とした腎癌免疫療法の有用性を評価するために、前実験として細胞傷害性T細胞(CTL)が認識するDNAJB8由来抗原エピトープの同定を行った。HLA-A24に結合する抗原エピトープの構造を設計し、HLA-A24陽性の健常者から採取した末梢血単核球(PBMC)をマグネットビーズを用いてCD8+細胞とCD8-細胞に分離し、CD8-細胞からPHA芽球を誘導して、この細胞群にペプチドをパルスし、抗原提示細胞として以下の実験に用いた。分離したCD8+細胞をペプチド刺激したPHA芽球で刺激しペプチド特異的CTLを誘導後、抗原特異性をIFN-γ assayで確認した。CTLの細胞傷害性はLDH release assayで確認した。CTLを誘導できたペプチドの配列がマウスDNAJB8の配列と一致していた。HLA-A24とマウスMHCの一つであるH-2Kdのbinding motifはその構造がよく一致していることが一般的に知られている。この事実を利用して同定した配列のペプチドをBalb/cマウスに免疫することにより、in vivoの免疫でCTLが誘導可能かを評価する予定である。マウスiPS細胞由来樹状細胞を誘導するために胎仔Balb/cマウス由来線維芽細胞株balb/3T3にセンダイウイルスベクターを用いて山中4因子を遺伝子導入し、iPS細胞を誘導した。幹細胞由来の遺伝子発現についてはRT-PCRで確認した。DNAJB8発現iPS細胞を得るためにDNAJB8を強制発現したbalb/3T3細胞をレトロウイルスベクターを用いて作成し、前述と同様に山中4因子を遺伝子導入し、DNAJB8を強制発現するbalb/cマウス由来iPS細胞を作成した。今後、Senjuらの報告と同様に樹状細胞を分化誘導を行い、まずはin vitroの免疫実験を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたアデノウイルスベクターの開発がうまくいかず難航していたが、代替として取り組んでいたペプチドワクチンによる抗腫瘍効果がヒトの系で確認できた。DNAJB8のペプチド配列はヒトとマウスで相同な部分が多く、今後は同様のペプチドを用いてマウスの系においても実験を進めていく予定である。
iPS細胞由来樹状細胞についてはDNAJB8を強制発現するbalb/cマウス由来iPS細胞の樹立に成功したため今後は樹状細胞への分化を誘導し実験を進めていく予定である。またペプチドワクチンに関してもマウスの系を用いてin vivoでの抗腫瘍効果に関する実験を進めていく予定である。
当初予定していた実験動物の購入が業者の都合により遅延となったため来年度で購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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10.1111/cas.13501
Biochem Biophys Res Commun
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